「これ、お姉さんが書いたやつ?」
 とっても広い不二宅のとっても広いリビングに置いてあった本を手に取った。不二はそうだよ、と微笑んでテニス雑誌をめくり始めた。付き合い始めてもう一年半にはなるのでお互い別のことをしていたって、同じ空間にいられるだけで満足なのだ。それに不二の家のソファーはそれはもうふっかふかで、長時間座るのが苦じゃないから読書にはうってつけ。
「どう?何かいいこと書いてあった?」
 不二が本をのぞきこむ。お姉さんと同じシャンプーを使ってるんだろう、ふわりと甘い花の香りがした。
「わたし、今年結構ツいてるかも」
「ほんと?よかったね」
 恋人とうまくいくとか、勉強や仕事もまあまあいいとか、なんとか。金運はあんまりよくないみたいだけど、こういうのって良いことも悪いことも含めてあんまり気にしたってしょうがないし。当たるも八卦、当たらぬも八卦。ってね。
「不二は、魚座の…A型だっけ?」
「B型だよ?」
「嘘、本当に?」
 本当、と不二は笑った。マジかよ。ずっとA型だと思ってた。だって全然B型っぽくないじゃんか。
「意外」
「よく言われるよ」
 血液型占いとか信憑性ゼロだっていうのを改めて実感した。不二がB型だなんて、今年のビッグニュース候補になれるレベルの衝撃だ。ていうか付き合って大分経つのに知らなかったとか。
「みょうじって、結構そういう占い信じるんだ?」
「べつに信じてるわけじゃないけど」
「ふふっ、まあ結構当たるよね、血液型占い」
「嘘だぁ、不二は当たらなさそ」
 そんな会話を交わしながら、魚座のB型の項目を読んでみる。不二とわたしの相性はなかなかいいみたいだ。