抱き寄せられた胸板からは青春の汗の匂いがするかと思ったのに、鼻をくすぐったのは男物の香水の少しツンとした匂いだった。生意気。高校生のくせに。
「大人ぶんなよ、ガキ」
「大人ぶった方がアンタは見てくれる。それにもう子供じゃない」
「どうだか」
背格好ばかり大きいくせに、人の気ばかりを惹こうとするなんて中身はまるで子供じゃないか。そういうことを言っているうちはまだまだ子供なのよ、今泉クン。そう吐き捨てた私にも彼は怯まなかった。
「別にアンタと並んでも不釣合じゃない。悪くないだろ」
だから俺の女になれよ。まさか高校生にそんな台詞を吐かれるなんて誰が思っただろう。彼の目は真剣だった。