運動音痴にとってバレーボールは一番辛いと思うのだ。ドッジは逃げればいいし、サッカーとかバスケは適当にボールを追えばいい。バレーはそうもいかない。サーブは絶対回ってくる、ボールが来たら取らなきゃいけない。地獄でしかない。なのになんでクラスマッチはバレーボールなんだ。なんで男女混合なんだ…!
「おいサーブ」
ギロっと睨むのはバレー部の影山くん。サーブが私の番なことくらいわかってる。ちなみに今日は一度も成功していない。というか成功したことがない。ボールを持つ手が震えてる。最初はクラスの女の子たちくらいは応援してくれていたけど、今では冷たい視線に変わっている。穴があったら入りたい。練習だからまだいいけど、本番これじゃあ存在消される。どうしよう。打たなきゃ。でも絶対外す…殺される!
「おい」
影山くんの冷たい声。ええいもうどうにでもなれ。力一杯サーブを打った。入れ、入れ。そんな祈りも虚しく聞こえてきたのはボールがネットにかかる情けない音だけで。
「チッ」
し、し、し、舌打ち…!半分涙目になりながら、ひたすらローテーションが終わるのを待つ。ていうか早くチャイム鳴れよ!いつまでこんな地獄にいればいいんだ!
私が悶々としている間に影山くんが華麗なアタックを決めて、それと同時にチャイムが鳴った。助かった…!安堵の息をついて足早にその場を去ろうとした、そのとき。
「おい」
後ろから聞こえてきたのは間違いなく影山くんの声。ヤバい、殺される…!体は一瞬逃げる体勢をとったが逃げたら余計ひどい目に遭うだろうと恐る恐る振り向いた。
「ヘタクソ」
「す、すみません…」
「放課後来い。練習見てやる」
「へ?」
「いいから来い。で、出来るまで見てやるから…」
じゃあな!影山くんはそう言い捨てて大股で先に行ってしまった。どうしよう本格的に殺されるんじゃないだろうか。そう考えたところで、心なしかほんのり赤かった影山くんの顔を思い出した。