うんと着飾るように言いつけて、それなりのレストランに連れて行って、美味しい料理を食わせてやる。私が彼女にしてやれることなんてそれくらいだと思っていた。年が近ければ他にもいろいろ思い浮かぶのだが、何せ彼女は今年着任してきたばかりで少なくとも私よりも八つは年下である。彼女に対しての欲望だの願望だのは並以上にあるが、まだあどけなさと少女性を残した彼女に私はどうもそれ以上の手出しが出来ずにいた。カタギリには手の早い君がねと失笑を食らったものだが私はしばらくはそれでもいいかと思っていた。彼女はそこに存在するだけで私の心を満たしてくれるのだ。
だから今日も日付の変わる前に何の手出しをするでもなく車で彼女を家まで送った。だがどうだろう。いつもならはにかんで礼を言う彼女が今日は助手席から動こうとしない。私の見繕ったドレスをぎゅうと握りしめている。見かねた私が声をかけると、彼女は絞り出すようにこう言った。
「ちゅ、中尉、わたし、今夜は帰りたくありません」
よもや彼女にこんなことを言わせてしまうとは。私よりもかなり年下とはいえ、彼女は既に女だということか。私は己の未熟の恥じ助手席の彼女の唇を奪った。お望みであるならば喜んで紳士の皮を脱ぎ捨てようではないか。