「刹那、待って」
小走りしながら刹那の背中に声をかけた。久しぶりの地球。久しぶりの重力。なかなか体が慣れない。目の前の刹那は何事もないようにすたすたと歩いているけど。
「悪い」
立ち止まった刹那が振り返った。四年前のあどけなさや少年らしさはすっかり消えている。背も伸びてすっかり大人っぽくなった刹那に、何も変わっていない私は置いていかれそうだ。刹那は女性らしくなったと言ってくれたけど。そういうことを言うようになった辺り、刹那はやっぱりものすごく大人になっていた。
「四年前はこんなに歩くの早くなかったのに」
「背が伸びたからな」
ふっと笑った刹那が、私がちゃんと隣に並んだのを確認して歩き出した。先程よりも随分と小さくなった歩幅。合わせてくれているのか。なんだかとても、嬉しかった。
「大きくなったね、すごく変わった」
「そうかな」
「昔は今みたいに謝ったり歩幅を合わせたりしてくれなかった」
皮肉をこめて言うと、刹那はまた笑みを漏らした。以前より少しだけ表情が豊かになった気がする。
「四年って思ったよりずっと大きな時間なのね」
「ああ」
「……あなたの成長をずっと隣で見ていたかった」
「……悪かった」
少し、独り善がりなことを言い過ぎただろうか。生きていただけめっけもの、だというのに。
「もう離さない、一人にもしない、なまえ」
長い沈黙の末の言葉に、私はハッと刹那を見上げた。真っ直ぐ前を見据える刹那の瞳はとても頼もしく見えたけれど、どこか悲しみを孕んでいた。