「みょうじは、新開と仲がいいの、だな」
福富が歯切れ悪く言った。いつも真っ直ぐ据わっている瞳がほんの少しだけ揺れていた。
「え、うん、普通に」
新開はそれなりに色々話す男友達、なだけだ。それに新開は福富の親友であり、私が嫌う理由もない。いきなり何を言うのかといささか投げ出したような私の返事に福富はそうか、と寂しそうに漏らした。
「え、なに」
「いや、」
なんで福富はいきなりこんなことを聞いてきたのだろう。唐突すぎやしないか。あ、いや、そういえば、さっき福富が来る前に新開と話したっけ。もしかしてそれ?
「あのさ、自惚れだったら悪いんだけど」
悪いどころか恥ずかしすぎる。
「もしかして、嫉妬したの?」
「……男の嫉妬は醜いとわかってはいるのだが、しかも、新開に」
語勢は尻すぼみで同時に逸らされる顔。マジか。福富もそういうのあるのか。
「なんだ。嬉しいじゃん」
「……そんなものか」
「うん。でももう心配しないでいいよ。私が好きなのは福富だからさ」
黙り込んだ福富。そこで黙るか普通。沈黙のせいでさっきの自分の台詞が急に恥ずかしくなってきた。 
「……あーねえ、次のレースいつなの?見に行こうと思」
「みょうじ」
言葉を遮られるように福富に名前を呼ばれた。いつもの真っ直ぐと据わっている瞳だ。この視線に射抜かれると、私は目を逸らせなくなる。
「好きだ」
なんだ。なんだもう。

▼福ちゃんが嫉妬