ごめん。ごめんよ清多夏くん。悪気はないし、他意もないんだ。恨むならこんなに課題を出した先生を恨んでくれ…!
「なまえくん!課題は終わったんじゃなかったのかね!!」
「予定では終わってるのーー!」
「先週会ったとき既に終わらせたと言ったのは君だぞ!」
「だって宿題終わってなかったら清多夏くん遊んでくれないじゃん!」
八月三十一日。世の健全な学生なら私のように宿題に追われていることだろう。私は寧ろ普通の学生なのだ。清多夏くんが真面目すぎる。ただ憎むべきは今日この日が大好きな清多夏くんの誕生日であること。無論私は宿題よりもマイダーリンである清多夏くんの誕生日の方が何百倍も大事なので、宿題をほっぽり彼の誕生日を祝うべく清多夏くんをデートに誘い一日中一緒にいる気だったのだが。普段鈍いくせになんでかこういうときの清多夏くんは妙に鋭く、私が宿題をまだ終わらせていないことを察知し強制的にやらされる羽目になってしまったのだ。清多夏くんは教えてはくれるが全く手伝ってはくれない。ちくしょう…。
「もうやだ答え写す」
「ダメだ!」
「無理だよ終わらないよお」
「自力でやらねば意味がないだろう!」
「清多夏くんの誕生日祝えないじゃーん!!」
やるせなくなってノートに突っ伏した。清多夏くんといちゃいちゃハッピーデートするはずだったのに。ていうかコレ明日提出じゃないし。当の清多夏くんは驚いたように目をぱちくりさせているし…ってえ?
「誕生日…?」
「そうだよ!今日のためにプレゼントも買ったしデートプランも考えてきたの!」
「い、祝ってくれるのか?」
「え?なにいってんの?あたりまえじゃん」
「そ、そうか…そうか」
「なんで照れてんの?」
口許を押さえて真っ赤になる清多夏くん。清多夏くん友達少ないから誕生日祝ってもらうのが照れくさいのかな。いやいやでもここまで赤くなることないよな。
「君に…覚えていてもらえるとは…祝ってもらえるとは、思わなくて」
「彼女だよ?当然じゃん」
「なっ…!」
清多夏くんの顔がもっと真っ赤になった。可愛い奴め。
「宿題がんばるね。清多夏くんのために」
「……」
口元を多い目を逸らす清多夏くん。可愛くていとおしくって後ろからぎゅうっと抱きしめた。いつもみたいにぎゃんぎゃん言われるのかと思いきや、顔を赤くした清多夏くんは何も言わなかった。
「お誕生日おめでと」
「なまえくん、」
「生まれてきてくれてありがとう。だいすき」
清多夏くんの首に回した腕に手を添えられた。あ、清多夏くん、泣いてる。


▼恥ずかしがる石丸
誕生日ネタですが大遅刻どころではないですね…