杉元はいつも部活が終わるまである女を待たせている。部活が終わるとそいつの元にそそくさと行って、宿題はちゃんと持って帰ったのかだとか今日提出の宿題は出しているのかだとか質問攻めにしている。女の方はぼーっとしているのかいつも眠そうで曖昧な返事を返しているが。てっきり物好きな彼女だと思っていたら幼なじみだそうだ。家が隣らしい。ベタすぎるだろう。
「お前さ、いっつもあいつの世話焼いてるけど何なの」
「い、今泉くん何なのって言われても…。なまえは抜けてるからほっとけないんだ!毎朝起こしに行かないとお昼まで寝てるし制服のリボンもちゃんとつけれないし靴下は左右違うのを履くし、ローファーも左右を間違えるし、バスは未だに路線間違えるし帰りは一人だと絶対寝過ごすんだ、僕がちゃんと見ていないと…」
なんだそいつ。よく人間やってられるな。杉元がなまえとやらのボケ伝説を語っているのを適当に聞いていると、当の本人が眠たそうに目をこすってやってきた。
「照くん、部活済んだ…?」
「なまえ!」
女の元に駆け寄った杉元は女のだらしなく出たブラウスをせっせとしまってやっていた。母親か。
「シャツはちゃんと入れろって言ってるだろ!」
「うんー忘れてたー。はやくかえろー」
「数学のプリントは?英語のテキストは?ちゃんと入れたの?」
「あ。取ってくるね。照くん待っててね」
杉元がはあと盛大にため息をついて、転ぶなよ!階段から落ちるなよ!と女の背中に向かって叫んだ。抜けすぎだろこいつ…。杉元が可哀想になってきた。
「お前も大変だな。あんなののお守りなんかさせられて」
「大変?なんで?」
どっちもどっちなようだ。お互い幸せそうだし、ほっといてやろう。

▼超過保護な杉元くん