真波山岳という人間がわからない。顔は笑っていても目が笑っていないことがあるし、目は笑っていても顔が笑っていないこともある。私を殴るときはそのどちらでもなかった。笑っているのは、確かだったが。
「あは」
ごん。鈍い痛み。揺れる。体が吹っ飛ばされて、地面に倒れ込んだ。ゆっくりと真波を見上げても、彼の真意など探れるわけもなかった。ぐるぐると、黒い何かが渦巻いている。
「あはは」
どん。勢いよく肩に足を叩きつけられた。ぐり。ぐりぐり。
「好きな人にこんなことされて、どう?」
好きな人?あ、私真波のこと好きだったのね。
「いたいよ」
ぐりぐり。肩が痛む。何か悪いものが体に染み込んでいくようだ。
「…興醒めだな」
ばん。真波が私を蹴飛ばした。遠くで聞こえるのは、ベルトのバックルを外す音。興醒めなんて、してないじゃない。
「何?」
私の視線に気付いた真波が、ベルトを地面に投げつけて私のところへやってきた。胸ぐらを掴まれる。感情のない真波の目が見たくなくて、唇を塞いだ。程なくして唇を噛まれる。痛い。これからもっと、痛くされるのか。まあ、いっか。

▼鬼畜な真波
鬼畜っていうかDVですねすみません