「君を見てるとどうしようもなく苛つくんだ、大嫌いだよ」
そう、と私は短い返事をした。モノクマが言うには、狛枝は絶望病なんていうふざけた病気にかかっているらしい。狛枝はなんでも嘘つき病だそうで。先の言葉も嘘ということだ。なんと恥ずかしい。
「熱があるんだから、寝てなさい」
「触らないで」
熱のせいで潤んだ瞳で睨まれても大して怖くはない。熱を持った頬に手を当てても、振り払われることもないのだし。
「早くどこかに行ってよ」
「うん」
「目障りだよ」
「そっか」
「君とは顔を合わせたくもない。島を出たら縁を切るからね」
「そっ、か」
遠回しに愛を囁かれるのはどうもくすぐったい。モノクマが仕掛けただけに厄介な病だ。
濡れタオルを絞ってやり、いつもより赤みの差した額に冷えたタオルを乗せてやった。病弱そうに見えて案外逞しい奴だと思っていたが、そうでもないようだ。
「嫌い。目障り。むかつく。なんでまだいるの…」
ここにいても可愛い罵声を浴びせられるだけなので大人しく退散しようとすると服の裾を引っ張られた。口ではあんなことを言っているくせに。
「どんだけ私のこと好きなの?」
「大嫌い…」
かわいい。正直ものすごくかわいい。今だけはモノクマに少しだけ感謝したくなった自分が腹立たしかった。

▼絶望病狛枝