真夜中シンフォニア

人間には誰しも苦手なものがある。
クイエートも例外無く、苦手なものは多々あった。
その内の一つがネズミである。

(しまった。今日はネズミ大量発生の日だった。)

だから今日は部屋に引きこもり、大道芸もしに行かなかったというのに。
昼間、あまり動かなかった為に、もともと不眠傾向なのに、いつもより眠れなくなってしまった。

(だからってなんで外に出て気分転換をしようと思ってしまったんだ。)

ため息をつきたくなる。
まだ家の周りだけなら良かったのだ。
真っ暗な空に浮かぶ丸い月に気を取られて、ついつい来すぎてしまった。
そして、気がついた時には大量のネズミに周りを取り囲まれていた。

(さて、どうする?)

ネズミの中には突っ込んで行きたくはない。
壁を昇ろうとも、ここは大通り。
道が広すぎて届かない。

そんなことを考えている内にもネズミ達が迫ってくる。



パァンッ!

いきなり大きな音とともに煙が舞う。
火薬の臭いが辺りに立ち込め、煙が退いた時にはネズミは一匹もいなくなっていた。

「何をやってるんだ。」

「デスコール!」

現れたのは仮面にクロークという怪しさ満載の格好をした
デスコールだった。
先程の爆発音もデスコールの仕業だろう。

「ありがとう、デスコール。助かりました。」

ネズミのいなくなった道を歩き、デスコールに近づく。
道にネズミの死体があるわけではないので、ネズミは音に驚いて逃げたといった所だろうか。

「君の弱点がネズミとはな。」

楽しそうにデスコールが言う。
まるで子供が新しいオモチャを手にいれた時のように。

「あれだけネズミがいたら誰だって恐いですよ。確かにネズミは嫌いですが。」

ネズミには良い思い出がないのだ。
昔のこととはいえ、トラウマは消えない。

「それより、どうしてここに?」

タイニーロンドンを彷徨いたとしてもめったに出会わないのに。
というか、あの格好で彷徨かれると怪しすぎる。

「君には関係ないだろう。」

そう言って大学の方に向かうデスコールに理由が思い当たる。
多分、間違ってはないだろう。

「レイトン教授なら今日は大学にいませんよ。」

すると、ピタリとデスコールの足が止まる。
振り向きもしないが、言葉の続きを待っているのがわかった。「研究が一段落ついたので、久しぶりに家に戻るそうです。先程、家の前を通った時に明かりがついていたので間違いないと。」

何故それを僕が知っているのか。
実は今日の夕方、レイトン教授が訪ねて来たのだ。
いつもなら依頼を解決するために東奔西走している僕の姿が見えないことに心配してくれたらしい。


「…………感謝する。」

ようやく聞こえるぐらい小さな感謝の声に苦笑する。
タイニーロンドンの闇に消えたデスコールは、レイトン教授の家に向かうのだろう。
その背中を見送った。



真夜中シンフォニア



早く僕も帰らなければ

END

あとがき

デスコールに助けられるクイエートを書いてみました。
彼等はいつもあんな感じであっさりと、でも何故かピンチにはお互いに助けに入る感じです。

螺涼さん、リクエストありがとうございます!




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