さぁ、彼に制裁を!
今、俺は非常に腹が立ってる。
その理由は一目瞭然、俺とクイエートにはネコミミとしっぽが生えていた。
腹が立ってるためかどっちもピンと立ってしまっている。
「カズトシくん、落ち着いて。可愛いよ。」
嬉しそうにネコミミを触ろうとしてくるクイエートの手首を掴んで止める。
「可愛いなんて嬉しくない!それにクイエートは落ち着きすぎだ。」
自分にもネコミミがついてるのに慌てる様子もなく、いつも通りニコニコ笑っている。
それに少し気が抜けた。
「だって、犯人はわかってるからね。」
そう、俺達がこうなったのにはあいつのせいだ。
「カズトシくん、いらっしゃい。」
クイエートにお茶に呼ばれて、訪ねて行ったのが始まりだった。
テーブルの上にはガトーロンドンがワンホール。
ただし、一人分切られて無くなっていた。
「ああ、それ?さっきまで、デスコールが来ててね。味見してもらったんだ。」
あいつが先に食べたのはムカつくけど、美味しそうなケーキに許そうかという気になる。
悪いのはクイエートじゃなくて、こんな時に来るあいつだから。
クイエートが淹れてくれた紅茶と共にケーキを味わう。
見た目を裏切ることなく、ガトーロンドンは美味しかった。
だけど、なんだか頭がむずむずする。
ふと、クイエートを見ると頭にあり得ないものがあった。
「クイエート!それ、どうしたんだ!?」
それ、とはもちろんネコミミのことだ。
青みがかった毛色のネコミミがクイエートの頭からピョコンと生えていた。
「カズトシくんの頭にもあるよ。」
指摘され慌てて鏡を見ると、確かに茶色の毛並のネコミミとシッポが生えていた。
触るとちゃんと感覚があるし、何より自分の意志で動く。
鏡に映った自分の姿がなんだかショックだった。
「僕ではない、ということは一人しか考えられないからね。」
クイエートは何もしていないと言うことは、原因は後一人しか考えられない。
俺達の前にケーキを食べたデスコールしか。
なので、俺達は今、ウェッジアーサー城に向かっている。
手にはもちろん、鉄パイプ。
クイエートは手ぶらだったけど。
ウェッジアーサー城に乗り込むと、アンソニーは俺達の顔を見るなりさっさと姿を消した。
狙いはアンソニーではないけど、賢い選択だと思う。
それなのに、当の本人は余裕たっぷりに紅茶を飲んでいる。
「ふふ、いい格好になったじゃないか。」
バカにしたように笑われて更に腹が立つ。
椅子から立ち上がろうともしないなんて。
「この仮面野郎っ!」
鉄パイプを振り上げてデスコールに向かう。
しかし、途中で思わず足を止めてしまった。
「クイエート…。」
「デスコール、解毒剤を渡してください。君が薬を盛ったのでしょう?」
いつの間に奪ったのか、背後からデスコールの首に剣の刃を押し当てるクイエートがいた。
デスコールもさすがに何もできないようでおとなしくしている。
「さすがは、と言ったところか。君を怒らせるのは恐い。解毒剤はこれだ。」
クロークの内側から出してきたのは小さな小瓶だった。
中には薄緑の液体が入っている。
クイエートは小瓶を受け取ると同時にデスコールを解放する。
そのタイミングを見計らって鉄パイプを降り下ろす。
だけど、クロークの端をカスっただけだった。
「チッ…!」
ただ、壁際には追い詰めることが出来た。
ニッコリと笑って逃げ道を塞ぐ。
横には同じく逃げ道を塞いで笑うクイエートがいた。
「先程までは解毒剤を手にいれるための取引です。」
一歩ずつゆっくりと距離をつめる。
不穏な空気に気付いたデスコールは後退るが、壁によって阻まれた。
「ここからはこんな目に合わせた仕返しだ。」
鉄パイプを大きく構える。
クイエートもデスコールの剣を突きつけた。
仮面の奧で見えない瞳が睨んでいるのがわかって、口角が上がる。
楽しいお遊びの時間の始まりだ。
さぁ、彼に制裁を!
その日、ウェッジアーサー城からは悲鳴が響いたという。
END
あとがき
和俊さんに差し上げたものです。
ネコミミつける許可も頂いちゃいまして、テンション上がりまくりで書いてました(笑)
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[mokuji]
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