ある青空の下での出来事

「結婚してくれよ〜!」

「うわ!?いや、ちょっと!困りますから!」



魔女の秘薬は確かに効果はすごかった。
何も知らずに飲ませたクイエートはボブにすごい勢いで求愛されて、めったにない程パニックになっていた。
逃げようにも腕を捕まれている。
結構な力で握られた腕はアザになるのではないか。

助けを求めて周りを見るが、誰もが知らんぷりで目を合わせない。
関わりたくないのは痛い程良く分かる。
分かるけど。

助けてよ!


「Hallo!ゴメンな、遅れてさ!」

グッと引き寄せて僕とボブさんを引き離してくれたのはプラチナブロンドで褐色肌の見知らぬ人。

「え?…え?」

「待ったよな?ほんとゴメンね〜!」


訳のわからない内に腕を引っ張られ、ボブさんと距離が離れる。
ボブさんも必死に追いかけて来たけれども、追い付かれるどころか、すぐにあきらめていた。前を向いて助けてくれた人を見る。
セーラースカートを翻して走る彼は…………


セーラースカート?


彼の顔も体つきも男のものだ。
でも、似合ってる。
スカートが似合う男の人ってなかなかいないよね。
なんて考えてしまうのは、ボブさんに求婚されたと言う事実から逃げたいからなのかも。
いつの間にか手を繋いでいて、伝わるぬくもりが少し気恥ずかしかった。

公園まで来て立ち止まる。
後ろを確認してもボブさんの姿はなかった。

「あ、あの…、ありがとうございました。」

「You're welcome!大変だったね!」

誰もが見て見ぬふりをしている中で、彼だけが助けてくれたのだ。
感謝してもしきれない。

「本当に助かりました。まさか魔女の秘薬であんなことになるとは。ええと…………名前を教えてもらってもいいですか?」

「俺はイサルド!呼び捨てでいいし、呼びにくかったらイーサでいいよ!」

ニッコリと親しみやすい笑顔に僕もつられて笑顔になる。

「僕はクイエート。僕も呼び捨てでいいですよ。本当にイーサのおかげです。」

今日はあんなことがあって最悪かなって思ったけど、イーサに知り合えたおかげでいい日になった。
タイニーロンドンに来て日が浅く友達という友達も少ない。
彼と仲良くなれたらいいな。





ある青空の下での出来事



「よろしくな、クイエート!」

「よろしくお願いします、イーサ。」


END


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