シャイニーガール(ぺいぱぁどぉる様)
午後のティータイムはデスコールと過ごすのが日課だった。
まともな休憩や食事を取らないデスコールを無理矢理誘ったのが始まり。
だから、このティータイムにはマドレーヌなどのお菓子はもちろん、サンドイッチなどの軽食もたっぷり用意される。
とはいえ、デスコールはほとんど食べないのだけど。
今日は気持ちのいい天気だったので、海辺に用意してもらった。
気持ちのいい潮風に吹かれながら、紅茶を飲む。
今日の紅茶は、ダージリン。
デスコールが淹れてくれたものだ。
お茶にお菓子にデスコール。
好きなものに囲まれたこのティータイムが楽しくないわけがない。
「そうだ、これを。」
彼が出して来たのはピンク色の小さな貝殻がいっぱい詰まった小瓶。
何かの花びらみたいでとても綺麗だった。
「cherry shell。マルスダレガイ目ニッコウガイ科の貝だ。学名をNitidotellina hokkaidoensisといい、和名は桜貝という。日本の桜の花びらに似ていることから名付けられた。」
薄いピンク色。
日本の桜はそれはそれは綺麗なのだと聞いた。
見てみたいと言ったことを彼は覚えていてくれたのだろうか?
「綺麗、ね。」
私が笑うと、それは良かったと彼も笑ってくれた。
「ねぇ!デスコール!何か入れ物持ってない?」
手を差し出すと、デスコールは苦笑しながらスーツのポケットを探る。
「これならあるが?」
差し出されたのは、貝の入っている小瓶より、更に一回り小さな小瓶。
「ありがとう!」
受け取った小瓶を開ける。
そして、その中にさっきもらった桜貝を半分移した。
「はい!これ、デスコールにあげる!」
戸惑ったようにデスコールは桜貝の入った小瓶とわたしの顔を見る。
「ミリーナ嬢?」
「あのね、デスコール好きだから、半分持ってて欲しいの!」
なかなか受け取ってくれないデスコールに、小瓶を無理矢理スーツのポケットに押し込める。
「無くさないでね!」
返事はなかったけど、否定しないということは大事にしてくれるということだと思う。
満足して紅茶をすすると、デスコールが時間だと言って行ってしまった。
小瓶の中を覗く。
小さな瓶には薄いピンクの幸せな色が半分。
デスコールに渡した瓶にも半分。
あのピンク色の貝殻を見る度に幸せを感じてたらいいのに。
シャイニーガール
渡したかったのは貝殻じゃなくて幸せ
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