ぬこぬこ記念日
どうも、ルゥです。
今日のタイニーロンドンは。
いつにもまして、カオスです。
君がニャーと泣いたから
今日この一日は ぬこぬこ記念日
にゃーにゃにゃ。
以来達成後、そう言ってお礼を言われました。
一応参考までに言っておきますが。
自分はルーク君ではないので、相手は猫ではありません。
嬉しそうにジェントルを受け取ったのは、アロマさん。
彼女はにこりと笑って、自分に言います。
「にゃーにゃ。ニャニャーニャ」
「・・・・・なー」
今日は朝起きてから今まで、にとなとや。
という音しか聞いていない気がします。
というか、聞いてません。
何処に行っても皆ネコ語。
何故こうなったのかと思ってカレンダーを見てみれば。
本日は、2が三つ並ぶ日。
新聞を見たら。
『今日の流行は猫語。さあみんなでにゃーと鳴きまくり、どさくさに紛れて普段言えない事をネコ語で言ってしまおうぜ!』
という、妙に乗りの軽い記事が載っていた。
一日限りとはいえ、はやりと言えば地下のナゾの存在ですら「ンマー」、喋らないはずのハトやねこですら「キッケンリキー」おっと違った「なぞピロンパ」と語尾に星をつけて話しちゃうような空間である。
だからネコ語が流行した所で本来ならば驚く要素はまるでないのだが。
これは驚くだろう。
語尾に「ニャー」がつく程度かと思いきや。
まさかのまさか。
全編ネコ語である。
ぶっちゃけ正直全く持って会話が成立する気がしない一日だと思ったのだが。
不思議な事に、町人の会話は成立していた。
普段は乗りと勢いで受け流すルゥも、なぜだ!と突っ込みたくなるような状況だった。
「にゃーにゃ」
「・・・なー」
にこにこと手を振るアロマに別れを告げ、ルゥは次の依頼人の元へ向かう。
次はボブだ。
少々面倒くさい説明で頼まれたスモークサーモンを片手に、ルゥは南下する。
何処に言ってもにゃーにゃーにゃー。
右手左見て、上見て下見てもにゃーにゃーにゃ。
「明日までに、自分の耳が戻るといいんですが」
呟きながら歩いていると、スコットランドヤード傍で肩を叩かれた。何事かと振り返ると。
スポッ。
軽やかな音と共に、頭に何かを乗せられる感覚。
これはあれだ。
帽子からカチューシャに、強制的に装備交換のあれだ。
反射的に取ろうとしたそれは、なぜか取れなかった。
「にゃー」
目の前にはアジア美女のレミ。
ルゥににっこりと笑いかけ、自分の頭を示す。
聞くまでも、聞かれるまでもない。
今まさに自分の頭の上に装備されたのは、猫耳だ。
「・・・・・なー」
グラサンかけた人間が猫耳つけていても可愛くないだろうなあとか思いつつ。
ま、はずれないものは仕方がないとルゥは猫耳カチューシャを甘受する事にした。
くるっと辺りを見れば、視界に入った人間の約八割の頭に、猫耳が生息していた。
いっそのこと「キュッキュッキュ、ニャー」と、どこぞの世界の御供猫の鳴き真似でもしてやろうかと思ったが、あんなに可愛らしい声を出せるような声帯を、残念ながら持っていないので止めておく。
ルゥの頭に猫耳を乗せたことで満足したのか、レミは新しいカチューシャを手に、新しい被害者を求めて走り去ってしまった。
聞こえてきた悲鳴。
方向はアーサーウェッジ城。
・・・・・・嗚呼、吸血鬼さん・・・
こみ上げた涙をそっと拭いながら、とりあえずボブの元へ向かう。
彼の姿はすぐに見つかった。
見つかったが、嫌な予感がしたのでルゥは距離を取りつつ、ボブの様子をうかがう。
振り返ったふとっちょ大富豪の目は、あれだ。
完全に、恋する乙女のそれだった。
誰だ!ボブに媚薬渡したの!
新規住人の恒例行事、言われるままにバラのおしり集めて、媚薬作れるってマジ美味しいよっしゃああっ、この薬を愛しいあの人に使ってうはうはしてやるぜという、大半のプレイヤーの期待を裏切り。
まさかの強制ボブの挙句、アバターとプレイヤーのハッピー値を完膚なきまでに抉っていくという恐怖のクエスト。
それを今、ボブに実行したのは、誰だああああっっ!!!
幸いな事に、惚れた相手が既にいるらしいのでルゥには被害は少なさそうだが。
それでも被害がないと限らないので、ルゥは遠く離れた所からスモークサーモンを全力で投げつけた。
燻製された鮭は空を舞い、何と言う奇跡。
猫耳の形を取って、ボブの頭の上に着地する。
全く持って可愛くない。
ルゥは何も見なかったことにして、気晴らしにクルーズカフェに行くことにした。
そう言えばカジノのボストロからバナナを持ってこいと言われていたが、バナナ賛美歌がトラウマなのであえて無視する。
いや、今日行ったら全部ネコ語だから大丈夫か。
いないな、良く考えろ。
あのゴリラの様な図体のマフィアが、バナナを掲げながらにゃーにゃと外見に似つかわしくないというか猫の鳴き声というものに対する冒涜でしかない言葉を使いながら、小躍りしながら歌い回る光景に出くわす事になるのだ。
これはもう、ハッピー値がマイナスとか、そんな生温い惨劇で済む訳がない。
それならばいっそ、いい歳こいたおっさんであるラルフが。
ちびちびとチョコマシュマロを小さくちぎりながら恥ずかしそうにもそもそ食っている姿を観察した方が、余程マシである。
あのおっさん自分で類希な一般人とか言っているが、確かに色んな意味で類稀である。
貴方の好物、色んな人にばれてますよ。
「お邪魔します」
そんな事を考えつつカジノを通り過ぎ、辿り着いたクルーズカフェ。
家から近い事もありよく使うが、扉をくぐるたびに英国紳士の微笑に出迎えられ、ルゥは良く落ち着かない気分になる。
何故かって?
レイトン先生、貴方、大学の授業はどうしているんですか?
そんな疑問はノーセンキュー。
シルクハットの上から猫耳カチューシャ(あ、クレアさんとお揃いの柄だ)をつけたレイトン先生は、にこりと笑う。
「にゃー。にゃにゃっにゃ、にゃにゃんにゃん」
大○ボイスのネコ語。これはなかなかレアである。
何故今日に限ってデスコールの姿が見つからないのか。
渡○ボイスでニャーニャーとか言われたら、俺のライフはゼロ地点突破するぜおっとよだれが。
「にゃー?」
自分のような自分のものでないような思考からルゥを引き戻したのは、小首を傾げたレイトン先生の声。
ああ、この顔この動きこの声。
こんなのをグレッセンヘラーカレッジでやろうものなら、悶え転げて負傷する学生が大量に発生してしまう。
そう言えばさっき店の前でゴロゴロ転がった挙句、そのまま海にダイブした学生らしき人が何人かいたが、彼らは無事なのだろうか。
・・・無事だろうな。
幸せそうな顔していたし。
この後釣りをする予定だから、釣り針をひっかけないように気をつけよう。
「なー」
レイトン先生が何を言いたいのか、ルゥはちゃんと把握した。
この英国紳士の事である。
恐らくは「ハーブティでも一緒にどうだい」とでも言ったのだろう。
というか、それ以外に思い当たる言葉が無い。
喉も渇いていたので、ルゥは一言鳴いて教授の前に座る。
甘いものが苦手な教授には申し訳ないが、紅茶は甘い方が好きである。
という訳で砂糖を軽く六杯ほど紅色の液体に投下し、躊躇いなく啜る。
「にゃー?」
「なー。なー?」
「にゃ」
教授とネコ語で会話をして、ポルテさんがネコ語で注文を取りに来て。平和な時間である。
それにしてもなぜ、会話が成立するのか。
きっと考えても無駄な疑問だと思うから、気にしない事にした。
世界には解けない謎はないが、あえて触れない方がいい謎もある。
「にゃあー」
「はい?デスコールのさんが、自分を違う名前で言っていた」
何の話だろう。
そして、思い出す。
ああ、彼には自分のフルネーム、言った事があるな。
それにしても、デスコールさんは何処に行ったのだろう。
まさか自分の装備が犬っぽいからと遠慮したのだろうか。
まさか。
そのまさかだったらどうしよう。
そんな事を考えながら、甘い紅茶をすする。
今日も平和である。
にゃーにゃーにゃの
にゃーにゃーにゃ
(本日はネコネコ日和也)
『あ、そうだ』
『レミさんに、帽子返して貰わないとなあ』
110222
ぬこぬこ記念日
ぺぃぱぁどぉるさまからフリーだったので頂いてきちゃいました!
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[mokuji]
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