いわゆる奇跡という

※奇跡の仮面のネタバレ注意





奇跡の街、モンテドール。
活気付く街は、今、ひとつの事件で賑わっていた。

奇跡の紳士

神出鬼没な彼はモンテドールに現れてはさまざまな奇跡を起こしていく。
人を消したり、絵画から描かれている人物が抜け出したり。
街の人々は、その奇跡が自分の身に降りかからないか恐れ戦いている。
しかし、観光客は途絶えるどころか奇跡を見に来る観光客が増えていた。
僕たちもそんな中に入るのだけど。

「すごいパレードだね!」

「さすがはモンテドール!So wonderful!」

パレードを見る大勢の観光客に混じって見ていたのは、イサルド、カズトシ、クイエートの3人だった。
奇跡の紳士の噂やパレードを行っていることを聞いたクイエートが二人を誘ったのだ。

パレードを見るために大勢の人が通りに溢れている。
暗闇を飾るネオンの光が溢れ、紙吹雪が宙を舞う。
ピエロや妖精の格好をした人達がその中をパフォーマンスを行いながら、行進する。
賑やかな音楽が辺りに流れ、楽しい雰囲気をより一層盛り上げていた。

しかし、そのお祭りの雰囲気は一気に壊れてしまう。

「キャー!!」

ひとつの悲鳴を引金に。




「What's happen!?」

「今の悲鳴は!?」

悲鳴が聞こえた方を見ると多くの人が此方に向かって逃げてくる。
人が石に!などという、にわかには信じられないことを口走る人もいた。

「行ってみようか。」

騒ぎの中心に行くという危険なはずの提案をすると二人とも頷いてついてきてくれる。
人の流れに逆らいながら、進んでいくと、何だか見覚えのあるシルクハットが見えた気がした。
しかし、パレードに使われていた大きなピエロが倒れてきて見失ってしまう。

「クイエート、大丈夫か?」

砂ぼこりからカズトシとイーサが姿を表す。

「カズトシ、イーサも大丈夫?」

お互いの無事を確認すると、ピエロを避けて通る。
すると、そこにあったのは人の形の石像の数々とシルクハットの英国紳士と少年。
やっぱり居たのか。

「あ!?え…あ……う…。」

教授を見つけて慌てたカズトシがイーサの後ろに隠れる。
しかし、イーサはカズトシの背中を押して、教授のほうへ向かう。

「Hello!」

「レイトン教授も来られてたのですね。」

なんでも古い友人に奇跡の紳士のことを調べるように頼まれたらしい。その昔の友人の屋敷に向かう途中に巻き込まれたとのこと。
昔の友人がこの街の有力者の夫人だというのだから、レイトン教授の人脈はすごいと思う。


「ご機嫌よう。諸君!奇跡の紳士だ。今宵も私の奇跡、楽しんで頂けたかな?」

屋根に現れたのは仮面を被って白いシルクハット、そして白いタキシードを着て同じ色のマントを着けた男。
仮面の魔力で街が滅びるなんてことを告げるとマントを羽根に変え、飛んで行ってしまう。

馬に乗ったレミさんが颯爽と現れ、レイトン教授達と共に奇跡の紳士を追いかけていく。
まだ馬は3匹残っている。

「俺達も行こう!」

繋がれていた馬を外して跨がる。
気性のいい馬達はいきなり乗っても暴れることなく言うことを聞いてくれた。
レイトン教授とは違う道を選ぶ。

「クイエート!?どこに行くんだ!?」

カズトシが叫ぶけど、イーサと二人で着いて来てくれた。
もちろん、奇跡の紳士を真っ直ぐ追いかけたレイトン教授と違う道を選んだのには理由がある。

「こっちでいいんだよ。今からレイトン教授の後を追いかけても追いつけないからね。」


そういうとカズトシも理解したらしい。
横に並んで聞いてきた。

「近道をするってことか?」

近道ももちろんする。
けれど、狙いはまだあるんだ。

「That'right!ついでに回り込んで教授と挟み撃ちさ!」

おまけにカズトシは教授追いかけるのキツイだろうからね。
苦笑すると、イーサが僕にウインクをする。
僕の思惑はイーサにはバレバレだった。

路地裏をしばらく走ると、小さな白いボールが馬の足元に転がってきた。

「!止まって!」

それが何か思い当たり、直ぐ様馬を止める。


パンッ

ボールが弾けると辺りは白い煙に包まれた。
煙が風に浚われ、うっすらと辺りの様子が見えてくる。
そこには先程までいなかったはずの人が。

「デスコール!」

ニヤリと唯一仮面から見える口で不敵に笑う。
彼が出てきた意図がわからない。

「いったい何のつもりだ、この仮面野郎!」

どこからともなく出した鉄パイプを構えるカズトシ。
さすがにそれはマズイので、イーサと共にカズトシの前を塞ぐ。

「奇跡の紳士のショーはお楽しみかな?もうすぐ、この街は潰れる。早く出発したほうがいい。…巻き込まれるのを望むなら別だがな。」

それだけを言うとデスコールは踵を返して去ってしまった。
三人とも何も言わずにお互いの目を見る。
言葉にしなくてもわかっていたのだ。
この騒ぎが誰の仕業か。

「…帰ろうか。」

馬の首を返して来た道を戻る。
ゆっくりと馬を歩かせながら、パレードの話や祭の話をした。
誰も奇跡の紳士やデスコールについて触れはしない。
この街には教授が来ている。
もうすでに調査を始めているのだから、解決はすぐだろう。


いわゆる奇跡という



策略は英国紳士によってもろく崩れるに違いない。

END




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