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今日も今日とて僕は頼まれ事を解決するためにタイニーロンドンの街を走り回っていた。
もうすぐレイトン教授やルークくんがこの街に引越してくるらしい。
楽しみにしつつも、少し不安がよぎる。
そんな自分に苦笑しながら、グレッセンヘラーカレッジに向かった。
「あ!クイエートさん!」
大学の廊下で掲示物を眺めている少年はルークくんだった。
最近はジャグリングもあまりしていないので、久しぶりだった。
「そうだ!クイエートさんって赤い宝石の謎を追ってるんですよね?」
赤い宝石。
頼まれ事を解決していくうちに追う形になったものだ。
今は多分、ドン・ポールの元にある。
「先生と僕でドン・ポールから宝石を奪い返したんです!」
「それはすごいね。」
神出鬼没な彼を探すのだけでも大変だろうに。
宝石まで奪い返すなんて。
「それで、博物館のグリンコ館長に鑑定をお願いしてるんです!あの宝石が何か興味ありますよね?」
実はというと、手にとって見てみたあの宝石は何ら他の宝石と代わり映えしなくって、宝石の正体に興味はあまりなかった。
けれど、何かわかるなら知りたい気もするので、頷いておく。
「でしょう?今から行くので、僕を博物館まで案内してくれませんか?」
「いいよ。行こうか。」
まだルークくんはこの街に不慣れらしい。
僕も最初のころはそうだったと懐かしく思う。
「そういえば、今日はレイトン教授と一緒じゃないんだね。」
ルークくんはレイトン教授といつも一緒にいるイメージがあるから、こうして二人きりで歩くのは変な感じがする。
「先生は今日は違う事件の調査に行っていて、僕が任されたんです。」
誇らしげに言うルークくんが微笑ましい。
尊敬するレイトン教授に仕事を任されたのが嬉しくて仕方ないって態度に出ていた。
ただ気になるのは、レイトン教授の用事。
「違う事件?」
「はい。クイエートさんは知ってますか?怪盗クラウンを!」
輝かしい笑顔で言うルークくんに少し怯む。
事件のことを話しているのに、何でそんなに笑顔なんだろう?
「怪盗クラウン?知らないなぁ。教えてくれる?」
「怪盗クラウンは、最近よく出現する怪盗で、宝石のついた装飾品をよく狙ってます。それも前サルマン伯爵ゆかりの品ばかりです。で、予告も無しに盗むんですけど、次の日には必ず元の場所に戻しているんです。」
目撃者の話によると黒いフードのコートを来ているとか身軽で足が速いなど手帳を見ながら、次々に怪盗クラウンの特徴をあげていくルークくんの姿は探偵のようだった。
「何でせっかく盗んだ物を返すんでしょう?どこも何も異常はなかったって話でしたし。」
顎に手をあてて考えこむ。
さすがレイトン教授に鍛えられているだけあるその頭脳も、怪盗の目的はわからないらしい。
「さぁ、何か理由があるのかも知れないけどね。さぁ、着いたよ。」
話している間にもう博物館に着いていた。
お礼を言ってグリンコ館長に駆け寄るルークくんを見て、踵をかえす。
「……怪盗クラウン、か。」
そう独りごちて、再び頼まれ事をこなすため街に戻った。
END
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