たった一言、嘘だと言って
※『どうか神様がいるのなら』の続きです。『trantacinque』とリンクしてます。読まなければ話がわからないと思います。
死ぬ間際に人は何を見るのだろうか?
人生の走馬灯?
きれいな花畑?
僕はそのどれも違った。
僕が見たのはーーー愛しいあの子の笑顔、だった。
ビィン!
「わっ!」
バイオリンの弦が千切れて跳ねた。
今日、張り替えたばかりだったのに。
「…クイエート?」
一昨日、会ったクイエートの様子がおかしかったからだろうか?
クイエートのことを考えると胸騒ぎがする。
…早く帰ってきてほしい。
レイトン先生が帰ってきた、と聞いた。
慌ててクイエートの家に向かったけど、クイエートは居なかった。
しばらく待てば帰ってくるのかも知れないけど、早く会いたかった。
だから、レイトン教授にクイエートの居場所を聞きに行くことにした。
教授ならきっと知っていると思ったから。
…なのに。
「…すまない、ミズタニ。」
教授から聞いたのは信じたくない話だった。
…クイエートが死んだなんて。
本当にあれで最後になってしまうなんて…。
クイエートはそうなること知っていたんだろうか?
いつも言わないバイバイなんて言っていたし。
なんだろう、胸に穴があいたように痛い。
空を見上げると雨がポツリと降り出してきた。
end
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