trantasei
「クイエート!クイエート!」
起き上がった先生が岩をなんとか動かそうと試みる。
しかし、先生の肩ぐらいまでの大きさのある岩はびくともしなかった。
「今、助けるからな!」
手はピクリとも動かず、先生の呼びかけに応えはない。
先生はそれでも諦めようとはしなかった。
また、パラパラと岩のかけらが落ちてきた。
「教授!ここは危ないです!早く上に行きましょう!」
レミさんが先生の肩をつかんで止めさせる。
先生はジッと岩を見つめていた。
「…その岩は私たちでは動かすのは無理です。」
何か道具になるものがあれば先生なら動かせたかもしれない。
けれど、ここにあるのは岩だけだった。
「…そうだな。すまない、急ごう。」
先生は決心した顔で立ち上がった。
それを見たレミさんは一瞬安心したような顔をしたけど、次の瞬間には真剣な顔になり走り出した。
背後から洞窟崩落の音を聞きながら、僕達は地上まで走り抜けたのだった。
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