いいから早く帰ってくれ
ウェッジアーサー城。
その古城には住むのは長い年月を生きるという吸血鬼。
美しいが故に噂と相まって恐ろしがってタイニーロンドンの誰もが近づかない。
ただ一人を除いて。
「で、何をしにウェッジアーサー城に行くの?」
「カティアさんからの依頼を果たしに。」
長閑な午後にウェッジアーサーに来た猛者が二人。
昼間でも薄暗く、コウモリの飛び交う城を怖がらずに進んでいく。
大広間に彼等の目的の人物がいた。
「ほら、アンソニー、居たよ。さっさと渡して、買い物にでも行こう。」
猛者の内の一人、クイエートは怖れる様子もなく、さっさと依頼を終わらせたい。
「ちょっと待って。まだ心の準備が出来てないんだ。」
もう一人の猛者のミズタニくんはアンソニーを怖れて物陰に隠れていた。
(あいつ達は何がしたいんだ?)
その様子を眺めるアンソニー。
ミズタニくんはクイエートを止めようとして物陰からはみ出てるし、そもそもクイエートはアンソニーから隠れようともしていない。
だから、その様子が丸わかりたのだ。
行こうとするクイエートとそれを止めるミズタニくんの攻防は続き、終わる様子を見せない。
始めはたまにしか来ない客人だし、面白可笑しく見ていたアンソニーだったが、さすがに嫌気がさしてきた。
「お前達、いったい何をしにきたんだ?」
「いいからちょっと黙ってくださいよ。」
思わず溢した疑問にすかさず冷たい声が返ってくる。
ここは私の家なのにと思いつつも、口出し出来ないアンソニーであった。
いいから早く帰ってくれ
END
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