昼下がりの二重奏
ヴァイオリンの澄んだ音色が昼下がりのロンドンに響く。
その音色はとても心地よく、僕は幸せな気分だった。
パチパチパチ!!
演奏が終わり一礼をしたミズタニくんに絶賛の拍手を送る。
観客は僕一人だから拍手喝采とはいなかいけれど、心を込めて叩いた。
「すごいね!ミズタニくん!とっても綺麗だった。」
ミズタニくんは照れたように笑う。
それがとても可愛かった。
「ねぇ、クイエート。あれ、ピアノだよね?弾けるの?」
ミズタニくんが指したのは部屋の隅に置いてあるピアノ。
掃除はしてるからホコリは積もってないけど、もう何年も触ってない。
「弾けるけど……。何年も弾いてないよ?」
一時期はよく弾いたけれど、あまりにその思い出が辛すぎて弾けなかった。
懐かしくてピアノを買ってしまったというのに。
「いいから、弾いて。僕も合わせるから。」
まぁ、いいか。
ミズタニくん楽しそうだし。
ちょっと下手なのは愛嬌ということにしてもらおう。
昼下がりの二重奏
(この日ロンドンには澄んだバイオリンとピアノの音色が響き渡りました。)
END
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