君に捧げる讃美歌を
♪Amezing grace,how sweet the sound
That saved a wreck like me
I once was lost but now I'm found
Was blind but now I see
風に乗って歌声が聞こえる。
とても綺麗な歌声。
ああ、確かこれは讃美歌、だ。
ふと目が覚める。
どうやら暖かい日差しに負けて眠ってしまったみたいだった。
歌はもう、聞こえない。
「起きた?よく眠ってたから起こさなかったんだけど。」
声のする方を見ると微笑むクイエートの顔。
クイエートの家に遊びに来てたのに寝てしまうなんて悪かったな。
「クイエート、歌ってた?」
眠りから覚める前に聞いた歌声が気になる。
今、歌を思い出すとクイエートの声だった気がする。
「うるさかった?」
困ったように笑うクイエートにそうじゃないといえば不思議そうな顔をした。
「もう一回歌って。」
クイエートの口から流れ出したのは先ほどのメロディ。
神に感謝し、生きる歌だ。
クイエートは歌い終わると恥ずかしそうに笑った。
「クイエート、歌上手いね。讃美歌、好きなの?」
「いや、前は嫌いだったよ。」
返ってきたのは予想と反対の言葉だった。
嫌いなのに、歌うはずがない。
「じゃあ、今は?」
聞くとクイエートは泣きそうに笑った。
「今は……ミズタニくんのおかげで歌ってもいいかなって思えるんだ。」
そう言ったクイエートはまた歌いだす。
♪Twas grace that taught my heart to fear
And grace my fears relived
How precious did that grace appear
The hour I first believed
先ほどと同じ歌。
俺と出会ってクイエートは神に感謝してもいいと思えるようになったのだろうか。
透き通った歌声は青空に消えていった。
君に捧げる讃美歌を
(君は僕にとって神様にも等しいんだ。)
END
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