桃色リップに含ませて

なんでこうなったんだろう?

目の前のテーブルには美味しそうな紅茶と手作りのピーチメルバ。
向かいの椅子には、見知らぬ人。
見知らぬ人はにこにこと笑って僕を見ている。
確かちょっと前まではいつも通りの日常だった
レイトン教授から地球儀をもらったとこまでは。

「ねぇ、お茶でもしない?」

レイトン教授とともにいた目の前の男はそう言ったのだ。
断ろうと首を振ったのに、腕を捕まれて有無を言わさず座らされた。
しかも、レイトン教授はすぐに戻ってくると言いおいてどこかに言ってしまった。
残された俺は見知らぬ人と一緒で気まずい。

「ピーチメルバ余ってたんです。レイトン教授にルークくんとレミさんの分を預けたんだけど、それでもまだいっぱい余っちゃって。ね、だから遠慮しないで。」

悪い人、ではなさそうだ。
目の前のピーチメルバを一口食べると優しい甘さが広がった。

「美味しい。」

正直に感想を述べると、彼は嬉しそうに笑った。

「良かった。ねぇ、君、レイトン教授を好きなの?」

「え!?」

何で、何でバレたんだ!?
唐突な質問は俺の図星をついたものだった。

顔が熱くなっていく。
頭も真っ白で何て答えていいものかわからない。

「ははっ!あぁ、ごめん、ごめん。可愛いねぇ、君。」

笑い出した彼をにらむと、すぐに気づいて謝ってきた。
けど、すぐに言われた言葉に顔が再び熱くなる。
彼が何を考えているのかさっぱりわからない。

「もう行かなくちゃ。あぁ、そう言えば名乗ってなかったね。僕はクイエート。またね、ミズタニくん。」

彼の去り際に頬に触れた柔らかいもの。
無意識に手を持って行き、自分の指の体温で思い出す。
キス、されたのだと。

さっきよりも熱くなった顔を伏せる。
誰にも見られたくなかったからだ。
しばらくすると教授も戻ってきたけれども、顔はまだ上げられそうになかった。


桃色リップに含ませて






END



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