sedici
またいくつかの庭園を見た。
たんぽぽが一面を覆い尽くしているものもあれば、浮き島から水が落ちて滝がいっぱいあるような庭もあった。
そのどれもがとても綺麗で、だけど、そのためにどこか現実感がなかった。
この間もカルヴァートさんはほとんどをクイエートさんの隣にいた。
腰に手を回している時もあれば手首を掴んでいることも。
とにかく、クイエートさんを放したくないようだった。
クイエートさんは嫌がってるようにも見える。
まるで、誘拐犯と嫌がりながらも脅されている為に逃げられない人質。
なんて考えてしまうなんて、僕も疲れてしまっているのかもしれない。
「さあ、皆さん。そろそろ我が屋敷にご案内致しましょう。お腹も空かれたでしょうし、食事も用意させましたので。」
食事、という言葉にレミさんの目が輝く。
歩き回って疲れてたし、お腹も空いた。
だから、だったのかもしれない。
何も疑わずについていってしまったのは。
END
[ 16/51 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]