quindici

案内された果樹園はドームの中にあり、綺麗に整備されていた。
水も温度も日光も調整されているのだという。
生っている果物は様々でどれも美味しそうだ。

「どれでも好きなだけ取って食べて頂いて構いませんよ。」

そう言われて近くにあったリンゴを1つもぎ取った。
サッと拭いて一口食べると幸せな甘さがさっきと同じように広がる。

「クイエートさんは食べないんですか?」

振り返って尋ねるとクイエートさんは困ったような顔をした。

「僕はいいや。お腹空いてないし、ね。」

手を振って答えるクイエートさんの横にはカルヴァートさん。
その左手はクイエートさんの腰に回っているようだった。

「ん?あそこに人がいるね。話を聞いてみよう。」

先生が指した方向には人がいた。
口元を布で覆い、木々に水をやっている。

「あの、すみません。貴方はここで何をしているのですか?」
尋ねてもその人は答えず、水をやりつづけている。
顔さえも向けないということは聞こえなかったのかもしれない。

「彼はここの庭師(ガーデナー)ですよ。彼に話しかけても無駄です。聞こえていますが、何も返って来ませんよ。」

カルヴァートさんが言ったその言葉でさえも聞こえていないように反応しない。
一心不乱に水をやるその姿はどこか生き物ではないようで怖かった。

「あれ?あの人、目はカルヴァートさんに似ていませんか?」

「そうだね。」

唯一見えている目元はカルヴァートさんにそっくりだった。
髪もカルヴァートさんと同じ赤。

「次へ行きましょう。果物はまた屋敷に届けますので。」

カルヴァートさんの促されて僕達は次の庭園に移動した。


END



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