quattordici

「クイエートさんはどうしたんですか!?」

いないことに驚いて、カルヴァートさんに詰め寄ると、彼は穏やか笑った。

「ああ、彼、ですか?直ぐに追いつきますよ。ほら。」

カルヴァートさんが指し示した先にはクイエートさんの姿。
だけど、何か違和感がある。

「クイエート、君はそんなブレスレットをしていたかい?」

先生が指摘したのはクイエートさんの左手首に光る太めの白いブレスレット。
何か紋様が付いている。

「ああ、私が差し上げたんです。似合うでしょう?」

カルヴァートさんが嬉しそうに言う。
勝手にブレスレットを見せるように手を持ち上げられても、クイエートさんは無表情だった。

「この紋様は……さっきも大門や東屋で見かけましたけど、なんの紋様なんですか?」

レミさんがブレスレットを見ながら尋ねる。
Nが二つ斜めに重なったような、星のような不思議な紋様だった。

「これはクロウリーの六芒星だね。」

クロウリーとはアレイスター・クロウリーのことだと思う。
確か優秀な錬金術師として有名な人だ。

「ここは全くクロウリーとは関係ないのですが、デリックが気に入ってしまいまして。」

苦笑して言うカルヴァートさんは表情や雰囲気が柔らかくなった。
親しい人だったんだろうか。

「デリックさんって言うのは?」

「ここの製作者です。ただの人見知り生物学者ですよ。さぁ、行きましょう!見て頂きたいものがたくさんありますから。」
話を変えるようにカルヴァートさんが僕達を促す。

僕達はあちこちを見て回った。
大体は同じような庭園が広がっていたが、その中でも花時計は綺麗だった。
庭園は東屋が多く、またオプジェなども多い。
レミさんや僕が感動してはしゃいでる間、クイエートさんは後ろのほうでずっとカルヴァートさんと共にいた。
なんだかここに来る前より表情が少なくなった気がする。

「教授!この星のオプジェ向こうにもありませんでした?」

「それは星ではなくて、正六芒星だよ。東屋の近くにあったね。」

「花時計の近くにもありましたよ!」

他のオプジェに比べれば小さいものだ。
だけど、その存在を主張している。

「何か意味することがあるのかも知れないね。」

レイトン教授が六芒星を調べだす。
裏にクロウリーの六芒星があった。

「もしかして、これはクロウリーの六芒星の頂点に置かれているのかも知れないね。全部見たわけではないから予測でしかないわけだけど、クロウリーの六芒星の真ん中の交点に何かあるかもしれない。」

先生がそこまで言ったところで背後から拍手が聞こえた。

「すごいですね。その通りです。」

誉められても驕らない先生が誇らしかった。

「そこは、後で案内します。次に行きましょう。次は果樹園です。」



END



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