tredici

「クイエートさん、少し私と来ていただけないでしょうか?他の方々はすみませんが、お待ち下さい。この庭を散策なさっても構いません。それほどお時間は取らせないつもりですが。」

そう言って歩き出したカルヴァートさんの後をクイエートさんが付いていく。
なんだか嫌な予感がして後ろ姿がを眺めていたけど、木々に遮られて姿は見えなくなってしまった。

「おかしいと思わないかい?」

レイトン先生が紅茶を飲みながら言う。
だけど、それの意味することがわからない。
レミさんも首を傾げていた。

「鳥の鳴き声や虫の姿を見ていない。これだけ緑があるのにも関わらず見ないということはいないのかもしれないね。」

耳を澄ましても鳥の鳴き声は聞こえない。
草むらを見ても確かに虫の姿はなかった。

「それがどうしたのですか?ここは孤島だからいなくても不思議ではないかと思います。」

レミさんが不思議そうに尋ねる。
蜘蛛が嫌いなレミさんにとっては虫がいないというのはいいことなのかもしれない。

「どれだけ離れた孤島でも虫や鳥がいないなんてことはない。色んな方法で渡ってくるからね。それに虫がいなければ、植物は増えないよ。彼等が植物の媒体になっているのだから。もちろん、虫だけが媒体ではないとはいえね。生態系がおかしいとしか言いようがないよ。」

なんだか不安に襲われる。
生態系を崩した何かとは何なのだろうか。
その時、木々の影から人が現れた。

「すみません、お待たせしました。」

戻ってきたのは、ノア・カルヴァートさん一人だけだった。



END



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