dodici
「ようこそ、いらっしゃいました。私の名はノア・カルヴァート。求めに応じ、来ていただきありがとうございます。」
大きな門の前で僕達を迎えたのは、招待状を送ってきたその人だった。
燕尾服を来て迎えたその人は、燃えるように赤い髪と透けるような白い肌で、まるで人形のよう。
ニッコリ笑う様は人好きのするものだ。
「初めまして。僕がクイエートです。」
クイエートさんはいつもの笑みで挨拶する。
そして、レイトン先生や僕達を紹介してくれた。
「こちらがグレッセンヘラーカレッジで考古学の教授をされているレイトンさん。こちらはその助手のレミさんで、彼はレイトン教授の弟子のルークくんです。」
初めまして、と握手をすると、彼の手がとても暖かいことに気づく。
白い手からは想像つかないことだった。
「では、こちらへ。あの大門をくぐれば楽園(エデン)となります。」
大門を潜った先には陽光溢れる庭園があった。
噴水や池から水が流れ、緑生い茂り、花が咲き乱れる。
「先生!あれを見てください!」
木々がとても小さな島によって高低様々に浮いていたのだ。
先生もレミさんも驚いているようで、目を丸くして息を飲んでいる。
「磁力、ですか?」
その中でもやっぱり冷静なのはクイエートさんで、驚いた様子もなく質問をしている。
「ええ。磁力の反発を利用しているのだそうですが、私にも詳しくはわかりません。しかし、素晴らしいですね。さすがです。」
カルヴァートさんが褒めるのにもクイエートさんは少し困ったように笑うだけだった。
「こちらへどうぞ。」
案内されたのは白い石造りの東屋だった。
テーブルにはお茶の用意がされており、カルヴァートさんが淹れてくれる。
「あの、ここには貴方以外は居られないのですか?」
レイトン先生がカルヴァートさんに聞く。
そう言えば、さっきから全然他の人の姿が見えない。
「いえ、居られますが、彼等がいる所はまだ遠いのですよ。島の反対側の果樹園に居られますから。後で案内しますね。」
果樹園があるということは自給自足なのだろうか。
自慢のフルーツだと勧められたものはとても甘くて美味しい。
なんだか幸せな気分になるフルーツだった。
レミさんも凄く幸せそうな顔をして食べているし、レイトン先生だって美味しいって食べてるのに、クイエートさんは一口も食べていなかった。
END
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