undici


そして、漁船に乗せて貰った僕達はメアリ・セレステ号を目の前にしていた。
霧の中、突然現れたメアリ・セレステ号は大きく、不気味だった。
だけど、想像していたようにボロボロな船ではなく、とても新しいように見える。

鉤爪のついたロープを投げ、クイエートさんが一番に登る。
登ったクイエートさんは僕達の為に縄ばしごを下ろしてくれた。
降り立った甲板は、やはり腐っていることもなく綺麗だった。
けれど、驚いたのは船に入ってからだった。
食堂にはテーブルに食べ掛けの食事、スープはまだ湯気がたっている。
暖炉や蝋燭には火が灯り、洗面所では今まで誰かが髭を剃っていたような痕跡。
なのに、この広い船には僕達を除いて誰一人として乗っていないのだ。

「本当に幽霊が……?」

怖くて息を飲む僕にクイエートさんは優しく微笑んでくれた。

「幽霊なら食事をとる必要はないし、髭も伸びないから剃らないと思うよ。」

クイエートさんの言葉を聞いてレミさんが質問する。
レミさんも怖かったようで、安心したような顔をしていた。

「じゃあ、誰かが乗っていたということですか?」

警戒するように辺りを見渡すレミさんにレイトン教授は答える。

「そのほうが可能性は高いだろうね。」

本当にこの船には誰も乗っていないのか、確かめる為に船の中を探検することになった。
船は船倉でさえホコリが積もっておらず、誰かが歩いた足跡さえも発見することは出来なかった。

「結局誰もいませんでしたね。」

1休憩ということでラウンジに行き、各々好きに座る。
クイエートさんが紅茶を淹れてくれたので、皆でお茶にした。
クイエートさんが紅茶の葉やクッキーを鞄から出してきたのには驚いたけど。

「いったいどういう原理で動いているんでしょうね。」

確かに人がいなければ風を受ける帆を張ることも出来ない。

「風や海流、そういったものじゃないですか?」

答えたのはクイエートさん。
けれど、酷くどうでも良さそうだ。
クイエートさんはいつもどこか冷めている印象を受ける。
彗星の時だって淡々とこなしていたし。
僕がそう思った時、大きな音を立てて船が止まった。
外に出てみれば、緑豊かな島が見えた。

「降りて見ようか。」

レイトン先生に続いて、僕たちはその島に降り立ったのだ。


END



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