dieci

深い霧の中、大きなガリオン船が姿を現す。

「先生!本当に船が!幽霊船です!」

ルークくんが見上げるように船を見る。
だけど、その全貌は見ることが出来ない。

「大きな船ですね。こんな船、誰も乗っていなくて動くのでしょうか?」

レミさんがカメラで何枚も写真を取りながら、レイトン教授に聞く。

「さぁ、どうだろうね。本当に誰も乗っていないのか……。」

レイトン教授も驚いてよく見ようと船の縁に近づく。
クイエートさんだけが何も言わず、ただ船を見ていた。

僕たちがこの幽霊船に出会ったのは、一通の招待状が始まりだった。




「やぁ、クイエートくん。」

今日はクルーズカフェでクイエートさんと待ち合わせだった。
なんだか相談したいことがあるらしい。
クイエートさんにしては珍しいことだった。

「すみません、レイトン教授。わざわざお越しいただいて。」

礼儀正しくクイエートさんは頭を下げる。

「はは、かまわないよ。」

レイトン教授が僕とレミさんの分も紅茶を頼むと、クイエートさんが手作りのガトーロンドンを出す。
クイエートさんの作るお菓子はとても美味しいので、レミさんの目は輝いていた。
お茶をしながらクイエートさんの話を聞く。
クイエートさんによると今日の朝、一通の招待状が届いたらしい。
差出人はノア・カルヴァートとなっている。
クイエートさんも知らない人なんだそうだ。
招待状には『クイエート殿、貴殿を楽園(エデン)に招待する。』と書いてある。

「このエデンというのは?」

レイトン先生が聞くと、クイエートさんは意外な答えを返してきた。

「幽霊船の噂、知ってますか?」

幽霊船っていうのは、最近度々見かけられている誰も乗ってない船のことだろう。
霧とともに現れ、霧と共に消える。
新聞を何度も賑わせていた。

「幽霊船の名前はメアリ・セレステ号なんです。招待状にもメアリ・セレステ号に乗ってくるようにと。」

淡々と言ってるけれど、クイエートさんは行くつもりなのだろうか。
幽霊船と恐れられる船に乗って。

「つまり、メアリ・セレステ号の行く先が楽園(エデン)というわけだね?」

というわけで、クイエートさんについて僕達も楽園(エデン)に行くことになったのだ。

END



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