otto
「君にこれをレーザー装置に設置してきて欲しいんだ。」
そう言って渡されたのはクイーンブラッド。
赤い紅い宝石。
この騒動の鍵とも言えるものだ。
「はい?」
確かに彗星が近づいて来て危ないのはわかる。
肉眼でも確認できるし。
だけど、なぜ僕?
「最後の扉は幸せな人でなければ開かなくてね。私もルークももちろん幸せだ。けれど、誰が一番この街を幸せにしたのかを考えたら君しかいないと思う。」
趣味で解決してきたためにそんな自覚ちっともないんだけど。
それに僕がそんな大役して大丈夫なのか?
「大丈夫だよ、君ならね。」
教授の笑顔に押され、行くことになってしまった。
地下水道はすっごくじめじめしていて、コウモリも多い。
「邪魔だよ、コウモリ達。」
そう思いながら進んだら、あまりコウモリ達は寄って来なかった。
結局、一度も咬まれずに奥まで進むことができた。
扉なんてないなぁと思いつつ進んでいくと、一ヵ所だけある壁の色が違う所、その前に人が立っていた。
「何やってるんですか?」
振り向いたその人は仮面とマントをつけたデスコールだった。
「君は……。」
「クイエートです。その扉なら開けるんでちょっと待って下さい。」
そう言うとデスコールは体を横にずらして場所を譲ってくれた。
壁は触るだけでいとも簡単に開いた。
小部屋の中にはとても古そうなレーザー装置。
すると、デスコールは一人でさっさと入って、レーザー装置を調べだす。
「かなり古い年代の物のようだな。そんな昔にこんな技術があったとは考えにくいが……。」
嬉々として装置を調べるデスコールには悪いけど、今はそんな暇はないし、場合でもない。
デスコールが装置を調べていたのでレーザーが間に合わず、世界は滅びました。
なんて嫌だ。
「すみません。時間がないんで。」
デスコールを押し退けて、装置の窪みにクイーンブラッドを嵌める。
すると、いきなり地面が揺れ、天井が崩れてきた。
その場から動こうとしないデスコールの腕を掴み、出口に向かって走り出す。
落ちてくる瓦礫を器用に避け、時には道を塞ぐ瓦礫を蹴り飛ばし、やっぱりコウモリに襲われることなく、出口に着くことができた。
久しぶりに全力疾走したため、胸が痛い。
「彗星は粉々になったらしいな。」
デスコールのその言葉に顔を上げる。
見えていた彗星は跡形もなく消えていた。
タイニーロンドンの空はただただ青く広がっていた。
END
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