rest in life(庵島様から 企画小咄)


>>吉乃様企画リクエスト「GE2うちよそ」
>>カナメさん+ココロさん+カガイ+セシル













既に日常茶飯事となりかけた光景に、千ヶ峰カガイは溜息を吐いた。朝起きてまず目に入るのは、始末書、契約書、報告書をはじめとする書類の数々が連なった山々だ。机の上にどしんと構えて微動だにしないこの山は、彼にしか取り扱えない案件である以上、氷鴇や他の隊員にまわすことなどできない。これらを少しずつ解体して持ち運び、朝食時や任務終了後の帰投待機時間、更にはヘリコプターの中ででも始末していかなければ期日には間に合わない。オーバーワークだの分業しろだのと第四部隊の隊長やブラッド一の食いしん坊からケチをつけられようとも、「本部所属の一流神機使い・千ヶ峰カガイ」にアサインされた仕事である以上やらなければならないのだ。

「はぁ……」

ペンを置いて凝り切った肩を回す。バキボキとなる骨の音に、カガイは眉根を寄せた。少し体を酷使しすぎたのかもしれないが、彼にとっての優先順位は健康よりも仕事のほうが勝っていた。朝飯時ゆえ、ラウンジ内には様々な人々が朝食を摂りに来る。彼らにとってもカガイのこの状況はいつものことだったので、別段気に掛けることなどなかった。皆が皆、彼の仕事を邪魔せん、いつも通りのことだ、と割り切って横を平然とすり抜けていく。カガイはこのことを若干不満に思いつつも責務を全うすべく、ペンをせっせと動かしていた。

「あれ、カガイ?なにしt……うわあ!?」

ひょこっと書類の山の合間から少女が顔をのぞかせる。ペリドット色の瞳が見開かれ、不健康体な同僚の姿を映し出した。茶髪の少女――響カナメは書類の山の裏手に回ると、心配そうにカガイの顔を覗き込んだ。

「ちょっ、ちょっとー……顔色悪いけど大丈夫?」

控えめに尋ねるが、カガイはふるふるとかぶりを振った。

「大丈夫だ、いつものことだし」

「いつもってヤバくないのそれ?!」

カナメはさらに吃驚した。最近極東支部に帰還したばかりの彼女は、カガイの「仕事」風景を見る機会がなかったのだろう。また、彼とともに三年前は働いていたこともあり、当時の彼の仕事量と比較しても、今の彼のオーバーワーク加減は余計に彼女の目に鮮明に映って見えるのかもしれない。

「確かに三年前の時も忙しそうだったけどさ、今はその比じゃないって!こーんなに大きなヤマ、今まで見たことないよ」

彼女の言うことも至極全うなことだ。現地点で、極東支部において一日にここまでの書類を裁かなければいけない人物など彼以外にはいないだろう。もっとも、カナメと一緒に帰還した雨宮リンドウ大尉も書類を提出すべきではあるのだが、彼の場合はソーマやアリサに巧い具合に「分業」している為にその範疇ではないのだ。
カナメはカガイの腕を取って無理やり椅子から立ち上がらせる。睡眠時間が二時間であり、更に連日の任務と書類仕事でボロボロのカガイには抵抗するだけの力などなかった。

「救護室連れてくからね。さすがにやばいよ、死んじゃうよ」

カナメの言葉に、カガイは力なく頷く。半ば引きずられるように連れて行かれるカガイを見つつ、セシルは紅茶を啜った。

「あの頭でっかち仕事バカも、あそこまで弱ってると女にすら抵抗できねーんだな……」

物珍しげに眺めていた彼の横に、コトリとトレイを置く音がした。セシルが顔を上げると、そこには紺色の髪の少女が佇んでいた。

「お隣座らせてもらっても、いいかな?」

柔らかく微笑む少女に、セシルもつられて思わず微笑んだ。

「朝から俺の笑顔見られるなんてラッキーだな。その上横で飯を食えるなんて、至高の喜びだろ、ココロ?」

澄ました顔でサラリと言ってのけるセシルに苦笑いしつつ、ココロは腰を下ろす。セシルはココロの朝食を一瞥し、溜息を吐いた。

「お前、そんだけしか食わないのか?力でねーぞ、力」

ケチを付けつつ、自らの朝食に手を付ける。セシルの眼前の皿には、多種多様、大量のサンドイッチが乗せられていた。元軍学校の生徒なだけあり、セシルは大食漢だ。その彼にとっては、ココロのトーストとサラダ、スープといったシンプルな朝食は少量に見えたのだろう。一般的な女性の食事量なんだけどなぁとココロは呟き、スープを一口啜った。

「あ、そういえば」

朝食を摂っている最中、思い出したかのようにココロが声を上げる。セシルもサンドイッチを摘まむ手を休めてココロの方を見やった。その頭上には疑問符が浮かんでいる。

「なんだよ、急に。思い出したことでもあったのか」

「うん、ほら、前言ってたお菓子の件だよ!」

突然言われたことで思い出せず、セシルは記憶を辿る。そういえば、天然同士の成立しているんだかしていないんだか分からない難解な会話の時に、そのような趣旨のことを言っていたかもしれないと思い出した。

「ああ、あの時のか……それがどうかしたのか?」

「いやー、あの時セシルも紅茶入れて一緒に食べよう、って話したよね?よくよく考えてみたら、セシルが紅茶入れるの私より上手いんじゃないかな、って思ってさ」

セシルは得意げに頷いた。自称紅茶を淹れるのが極東で一番上手いエミールが舌を巻くほどの上手さであるという話もあるのだから、彼の自信も相当なものであろう。だから、とココロは言葉を続けた。

「淹れ方を教わりたいなーって思うんだけど……ダメかな?」

セシルの方が彼女よりも身長が大きいため、自然と上目遣いになる。セシルは薄い黄緑の瞳にまっすぐ見つめられて照れたのか、顔を彼女から逸らした。

「ま、まあなんだ、その……どうしてもっていうなら教えてやってもいいけど?」

少し照れながら上から目線で言うセシルに、ココロは笑顔で頷いた。

「うん!宜しくね」


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「俺は疲れてない、だから仕事しないと……」

「だめったらだーめ!!ね、ヤエさん」

「カナメさんの言うとおり、カガイさん……休 ん で く だ さ い ね?」

「……くそう、仕事をどうすれば……」

「今のカガイには仕事より休息が必要だから休む休む!」

「ぐ……仕方ない、そうさせてもらうか……」


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非常に遅くなってしまい申し訳ありません!
吉乃様企画リクエスト「GE2うちよそ」でした。
カナメちゃんのカガイに対する口調を敬語か常態か迷いましたが後者にしました。GEBは19でしたしね、カガイは。
5000hitでいただいた作品と後半ちょっとつなげてみましたが突貫工事臭が若干するという……すみません;;
吉乃様のみお持ち帰り可能です。
企画参加ありがとうございました!

―――

庵島様宅の企画に参加させていただきました!
まさかカナメまで出していただけるとは思わなかった上にココロとセシル君の会話が拙宅の企画小咄と繋がっていてもう悶絶状態ですありがとうございます…!(床ゴロンゴロン)←
庵島様、素敵な小説ありがとうございました!

持ち帰り禁止

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