哀贈
ついに捕まえた。ぼくの天馬。ぐったりとぼくの胸で気を失う姿は、死人みたいで綺麗だと思う。ふっくらした頬は、噛み付いたら簡単に噛み千切ることが出来るんじゃないかってくらいに柔らかそうだ。ぼくはそれに口付けを落とす。思った通りの柔らかさに、思わずその頬を噛む。
「んんっ……!?」
天馬がもぞりと動き始めた。これくらいの刺激で目を覚ますってことは、薬が足りなかったのかも。
「シュウ……?」
天馬はゆっくりと瞼を開き、海のような目でぼくを見る。それから、きょろきょろと当たりを見回した。
「…たしかおれ、シュウたちと試合して負けちゃってそれから…あっ、みんなはどこ?キャプテンたちは…」
「あいつらなら殺しちゃった。」
ぼくが笑って告げると、天馬の表情が固まる。そういう表情ってぼく好きだな。まるで絶望したみたいな。
「力が無き者に価値はない。天馬一人守れないような弱い奴らにはみんな死んでもらったんだ。」
「そんな…ねえ…嘘でしょ?」
震える天馬を、ぼくはそっと抱き締めた。天馬はまだ信じれないみたいだ。みんなを殺したぼくが天馬を抱き締めても拒絶しない。
「ほんとだよ。良いもの見せてあげる。こっちおいで、」
ぼくは天馬の手を引くと、森の奥へ誘った。
そこはぼくが眠る場所。ぼくたちのお墓がある場所。そしてそこに、彼らもいる。
「キャプ…テン……信助……みんな……」
天馬はがっくりとその場に項垂れた。そこにあるのはぼくが殺した天馬の仲間だった塊たち。ある程度原型を残したのは天馬がすぐにわかるように。体はぐちゃぐちゃにしちゃったけど、顔は半分くらいは綺麗に残した。
その場に座り込んでる天馬を、後ろから抱き寄せる。耳元に口を寄せて、そっと囁く。
「もうこの島にはぼくと天馬しかいない。2人だけの島になったんだ。」
「……っ!!」
天馬は思い切りぼくを振り払って立ち上がると、ぼくを睨み付けた。天馬のこういう顔を見るのは初めてだ。
「……ゆるせない……なんで、こんな……!」
「だからさっき言ったじゃない、力がない者に価値はないって。要らないんだよ、そいつら。力がないくせに必死に天馬のことを守ろうとして、すごく滑稽だったよ。結局守れなくて、悔しそうな顔して死んでった。」
淡々と告げれば、だんだんと天馬がぼくを睨む目が鋭くなる。
「…シュウ…おれはお前を…絶対に許さない!」
憎しみの籠もった瞳がぼくを、ぼくだけを捕まえる。
「…どうする?仇を討つの?12人懸かりでもぼくを止められなかったのに?」
「…相討ちでも、お前を殺す!」
ばかだなぁ、天馬。もうぼくは死んでるのに。だけどかかっておいで、天馬。そうやって憎しみでいっぱいになって、ぼくのことだけ考えたらいい。ぼくが憎くて憎くて憎くて仕方ないだろ?ぼくは何度でも殺されてあげる。だから天馬は死ぬまでぼくのことを考えてよ。
「いいよ。やろう…死ぬまでね。」
愛憎の試合を始めようか、天馬。
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5000打リクエストです。ヤンデレってこういう感じでしょうか?初めてこういうタイプの文章を書いた気がします。違うぞって言うのでしたら書き直しますのでご連絡下さい。
ミシヤ様リクエストありがとうございました!
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