出会い1

転校生という名目で新しく天河原イレブンに入ったのは、フィフスセクターのシード―つまりは天河原の監視役だった。
彼の転校初日の放課後。喜多は、練習前に一度転校生に挨拶しておこうと早めにグラウンドについた。そこには既に、転校生の姿があり、ユニフォームを身に纏ってリフティング練習をしていた。

「隼総…だったか?サッカー部のキャプテンの喜多だ。これからよろしく。」

そう言って喜多が伸ばした手を隼総は勢い良く払った。

「……俺はお前たちの監視の為に来た、馴れ合う為じゃない。」

それだけ言うと隼総はその場から離れた。

「なにあれ、感じ悪〜…。」

隼総の背を忌々しげに見つめながら、いつの間にか後ろにいた西野空が呟いた。それに続けて安藤が喜多の肩を軽く叩きながら笑った。

「キャプテ〜ン、あんなんほっといて練習しましょ。シードだっつっても、俺たちはちゃーんとフィフスセクターに従ってるんだし、あんなやつ気にしなくていいっしょ。」

しかし喜多は隼総のことが気がかりだった。どうしても隼総が、ただ感じ悪いだけの奴には見えなかった。

その日の練習後、喜多はもう一度隼総に声をかけた。隼総はずっとグラウンドの隅でリフティングやドリブルをひとりで練習し続けていたが途中で帰ることは無かった。

「お疲れ、隼総。お前、テクニックあるな。お前のような強い選手が入ってくれれば、うちも更に強く…」

「用がないなら帰る。」

喜多が話す途中で、隼総は不機嫌そうに口を開き、喜多を振り返った。ようやく自分と目を合わせた隼総に、喜多はわざとらしくないよう、淡々とした表情で言った。

「用ならある。今日、一緒に帰らないか?」

遠巻きに見ていた西野空たちが驚きの声を上げる。同時に隼総も驚いた顔をしたが、少し考えたような間を空けて、またしかめっつらに戻った。

「…一緒に帰っても話すことなんかないだろ?」

「そんなことはない。俺はお前を知らないから、お互いを知るためにいくらでも話せばいい。」

お互いに見つめ合って引かない。

「何故そこまで俺に構う?」

「ほっとけないだろ、いつまでもそんな調子じゃ試合にだって差し支える。」

「試合なら、お前らは今までのやり方でやればいい。お前らのプレイスタイルは知ってるから合わせてやるしよ。」

「それじゃチームプレイの意味が無いだろ!」

「勝ち負けの決まってる試合にチームプレイなんか必要ないだろ」「それはっ…」

「もうやめなよ喜多〜。こいつに構っても無駄だって。試合は上手くやるって言ってるしいいんじゃないの。」

2人のやりとりを見ていた西野空が口を挟んだ。隼総は溜め息をついた。

「そういうことだ。じゃ、帰るわ。」

ひらひらと手をふりながら背を向けてしまう隼総。隼総を追おうとした喜多だが、西野空に肩を掴まれて引いた。追ってもかける言葉などなかった。

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