リアリストを知らないか

俺の後輩は動物と話せると言う。いや、それどころかサッカーや化身なんかにも話しかけているくらいだ。その後輩と言うのが松風天馬。俺の友人、神童拓人の恋人だ。

2人の馴れ初めは耳が腐るほど聞かされた。部活で知り合い恋に落ち、告白は松風からしたらしい。その告白の台詞まで一字一句覚える程、神童に聞かされた。

『初めて逢った時から、キャプテンじゃなきゃダメだって、思ったんです!キャプテンはおれの運命の人なんです!』

運命だとか、今時の中学生の告白とは思えない。だけどそれを語る神童の目はとろっとろの蜂蜜でもコーティングしたように甘ったるい。口調だって聞いたことが無いくらい、優しい、吐息の多い声だ。
そしてその神童の、告白の返事がこうだ。

『お前もそう思っていたのか…俺も、初めて見たときからお前に心を奪われていたんだが、先に言われてしまったな。だが、俺がお前を思う気持ちは変わらない。お前を見るだけで鼓動がアレグロ・コンブリオなんだ。』

最初、剣城と倉間の次に天馬のこと拒絶してたよな?何記憶捏造してるんだ。とろけた本人に言いはしなかったがどう考えても神童は天馬に一目惚れなんかしてなかった。そして、音楽用語が天馬に伝わったかも怪しい。というか俺もよくわからない。

そういう流れでこいつらは付き合いだしたんだが、そのバカップルが今部室で着替えながらなにやらやらかしている。

「結婚式は、ハワイの誰もいない小さな教会で2人きりで挙げような。」

「わぁ!素敵です!俺、キャプテンのタキシード楽しみです!」

「天馬のドレスは特注しような。俺がお前に一番似合うものをデザインする。」

「はい!あっ、ケーキは秋ネェに焼いてもらいましょう!」

「それはいいな!秋さんの作るものはなんでもおいしいらしいからな!」

「はい!…キャプテン、おれのこと、世界一幸せにしてくださいね?」

「当たり前だろ。…ああでも、世界一は無理だな。」

「ええ!そんなあ!おれ、キャプテンといたら、世界一幸せになれますよ!」

「いや…世界一の幸せ者は俺だからな。」

「キャプテン…!」

何だろうこの茶番。ここは部室で、部員全員が聞いてるはずなのに、誰一人気にしてない。それくらい日常茶飯事なんだが。ああ…頭が痛くなる。


リアリストを知らないか誰かこのロマンチストたちに現実を教えてやってくれ。



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南沢「お前たちに現実ってもんをry」

拓天企画/好きで、好きで提出作品。

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