それから暫く、隼総はチームに馴染める訳もなくひとりで練習をしていた。喜多は何度か隼総に話しかけたが、無視されてしまった。

ある日、喜多は監督に呼び出された。

「今度練習試合をやろうと思うの。相手は大して強くないんだけど、隼総くんが入ってから試合してないでしょ?ホーリーロードの前にはした方がいいと思って。」

練習試合。未だ隼総のプレーをまともに見たことがない喜多には願ってもないチャンスだった。喜多は喜んで監督の提案を飲んだ。

「ありがとうございます。是非やらせてください。」

「じゃあ手配はしておくけど、大丈夫?隼総くん、まだ馴染めて無いんじゃないかしら…」

「はい…でも、あいつは悪い奴じゃない気がするんです。」

喜多は自信たっぷりにまっすぐ監督を見つめた。

「そう、喜多くんが言うならそうかもしれないわね。頑張ってね、私も相談に乗るから。」

「ありがとうございます。」

監督に頭を下げると、喜多はグラウンドへ向かった。そして練習試合の話をするためにチーム全員を集めた。

「練習試合が決まった。相手は無名とはいえ、勝敗指示無しにやれる貴重な試合だ。全力でやろう。」

喜多の報告に、一同少し嬉しそうだ。何せ、フィフスセクターの干渉無しに出来る試合は練習試合を含めても僅か。フィフスセクターに従っているとはいえ、自由なサッカーの方が皆好きである。

「今までのスタメンに隼総を入れる。ポジションはMF。背番号は6番だ。」

練習試合と聞いて喜んでいた空気が一瞬、張り詰める。皆隼総を危険視している。そうとは知らずに喜多は続けた。

「隼総、期待してるぞ。」

「はいはい…」

隼総の生返事に、喜多以外の誰もが不満だった。皆、せっかくの試合が隼総のせいで台無しになるのではないかときにしていた。

「それじゃあ解散。」

喜多から解散の合図があると皆散り散りになった。

だれかが隼総の横を通るときに、「だれかさんに台無しにされなきゃ良いけどな」と呟くのが喜多にも聞こえた。

隼総は済ました顔でグラウンドの隅に行き、またひとりで練習を始めた。

結局、練習試合の当日まで隼総がチームに混じって練習することはなかった。

[ 16/18 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -