神童と天馬
2012/03/26 00:42
何が悲しかったのか、神童には思い出せなかった。ただひたすら目から涙が滲んで、それが頬を伝わって落ちる。
落ちた涙は床に触れると砂糖の塊に変わって、コツンと音を立てる。何度も何度も繰り返していつの間にか床には飴玉が沢山転がっていた。
そのひとつを、天馬は拾い上げて口に運ぶ。からんと歯に当たる音が鳴る。それから口の中で少しだけ転がす。まだ天馬の口の中の飴が無くならないうちに、天馬はもうひとつ、飴を拾う。今度はそれを、神童に差し出す。
「甘くておいしいですよ?」
神童は泣きっぱなしの顔を怪訝そうにしかめながら、唇を少しだけ開いた。その隙間から、天馬が飴玉を転がしてやると、やっぱり歯に当たってからんと音を立てる。神童も、天馬を真似て飴玉を口の中で転がす。懐かしいような、単純な、砂糖の塊の味。
「…確かに甘いな。」
神童の頬は確かに綻んだ。
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あまりに眠くて意味が分からないシリーズ
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