とある兄弟と、とある中学生
2012/03/23 01:52


住宅街にある小さな公園。そこで毎日のようにサッカーをして遊ぶ小さな兄弟。

「ばくねつストームっ!!」

弟は、力いっぱいにボールを蹴る。しかしボールは兄のいる方ではなく、あろうことか高く上がって木に引っかかってしまった。

「あーあ…」

兄は苦笑いした。それを見た弟は、兄をがっかりさせたくなくて木の方へと走り出す。

「あっ、おい!どうするんだよ!」

「おれがとる!」

木登りに自信のある弟は、得意気に答えた。兄は危ないから止めようと走り出したが、それよりも早く、兄弟よりひとまわり年上の少年が弟と木の間に立ちふさがった。

「まって!」

少年は真剣な声で叫んだ後、怯んだ兄弟に向けて笑顔を見せた。

「…危ないからおれが取ってあげるね。」

そう言うと、持っていたボールを蹴り上げ、木の上のボールに当てた。2つのボールは僅かな時差で地面に落下した。

「すごい…!」

兄は目を輝かせて見つめた。今まで憧れていた炎のシュートとは対照的な、風を纏うようなシュートだった。
少年はボールを拾うと、弟に差し出した。

「はい、どうぞ。」

「ありがとうお兄さん!」

弟はボールを受け取って、じっと少年の服を見た。

「お兄さんもしかして雷門中?」

少年ははっとして自分の体を見る。間違いなく雷門中の制服を着ていた。

「うん、そうだよ。だから君たちもいつか雷門中においで。」

そう言うと、少年は弟の頭を撫でた。目を細めながら、弟にある人物を重ねる。

「うん!おれ、雷門中に通う!」

「ああ!絶対来いよ!」

少年と弟は指切りをした。あとから歩いてきた兄にも、少年は指切りをした。

「お兄さん、雷門中に通ったら、おれたちの試合みにきてね!」

「ああ。一番近くで見るよ。」

少年はにかっと笑うと、2人から離れた。

「おれ、そろそろ帰るよ。」

「待ってお兄さん!」

帰ろうとした少年を、弟は呼び止める。少年は振り返ると、立ち止まった。

「お兄さんの名前教えて!あ、おれの名前はね…」

「大丈夫。知ってるから。」

そう言うと、少年は大きく手を振った。

「おれの名前は次に会うときに絶対教えてやるよ!」

弟は納得してない様子だった。兄もまた不可解な顔をしていた。
そよ風が少年と兄弟の間に吹き抜ける。

少年が残したボールには、稲妻のマークが描かれていた。




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