倉間と天馬
2012/03/19 00:24


「…だれだお前。」

そう言って、倉間先輩は訝しげに眉を潜めた。


事の発端は数分前に遡る。みんなで部室の大掃除をしていたときだ。分担をくじ引きで決め、おれと倉間先輩は運悪く、円堂監督たちが使っていた旧部室を引き当てた。運悪く、と言うのも、あそこは高めの位置にあるロッカーにも物が詰め込まれている。背が高いとは言えないおれと倉間先輩は、みんなの憐れむような視線に見送られて旧部室へ向かった。旧部室は案の定高くまで物が積まれていたが、幸いにも使われていない古びた椅子や机があった。それを足場にすれば高い位置の掃除も問題無さそうだった。おれは棚をロッカーの中を整理しながら、ちらりと倉間先輩に目線をやった。倉間先輩は黙々と雑巾で空のロッカーの中を拭いていた。気まずい沈黙が支配していた。倉間先輩は未だにおれに心を開いていなかった。他の一年とは話すのに、おれにだけは冷たかった。だから正直倉間先輩とペアは苦痛に感じていた。おれも黙々と片付けを進めると、倉間先輩は椅子をロッカーのそばまで運んでた。どうやらもう下の方は終わったようだった。倉間先輩が椅子に足を乗せた瞬間、悲劇が起きた。古びた椅子の脚が、鈍い音を立てて折れた。倉間先輩の体はぐらつき、先輩は頭か
ら床へ崩れ落ちた。慌てておれが駆け寄った所で、冒頭に戻るのだった。

誰だと訪ねる倉間先輩に対し、咄嗟に記憶喪失なんだと悟った。冗談を言う先輩じゃないから、すぐに確信した。同時に悪戯心も生まれた。ここで嘘をつけば、倉間先輩との関係が修繕できるかもしれないと。おれは口を開いた。

「忘れちゃったんですか…?先輩、おれのこと一番に可愛がってくれてたのに。」

ちょっと眉を下げてみて、ちらりと様子を窺う。倉間先輩はぽかんとして何か考えた後、いきなりおれの手を掴んだ。

「悪い…記憶がねえ。だけどお前のこと、大事な奴だった気がする。…お前、俺になんて呼ばれてた?」

倉間先輩がまっすぐ見つめてきて、戸惑う。おれに対してこんなに申し訳なさそうにしたり、大事なんて言う倉間先輩はおれの知ってる倉間先輩じゃない。

「えっと…天馬…です…」

「天馬。そうか。悪いな。ちゃんと思い出すから。」

そう言って笑みを浮かべた倉間先輩は、輝とかと話すときの頼もしい先輩の顔をしていた。何故か胸が締め付けられた。




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飽きてブチりました。この後倉間が暴走してお付き合いする展開にしたかったのですが思いつかない。だれか続きかいてください。




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