太陽と天馬
2012/03/27 17:42

「天馬んちに泊まりたい!」

そう太陽が言い出したのが数十分前。学校とか部活の話が聞きたいと言った太陽に、天馬が色々話す中で信助とのお泊まり会の話をした直後の太陽の第一声だった。
天馬は「おれは良いけど太陽がダメだろ?」と言ったが、太陽の「ぼくはなんだっていつ出来なくなるかわからないからしたいときにするの!」と言われ、断れなくなってしまった。結局少し揉めたが、太陽のいつもの脱走ルートを使って2人で木枯らし荘まで走ったのだった。きっと今頃、『天馬んちに泊まってきます☆1日だけだから』と書いた置き手紙を見つけた冬花が困っているだろう。それを考えると天馬は罪悪感でいっぱいだったが、嬉しそうな太陽を見ればすぐにそれは忘れた。

「わ〜ここが天馬の部屋?すごい、天馬のにおいがする!」

太陽は部屋に入るなり勢いよくベッドにダイブした。天馬はその頃、秋に事情を話して承諾を得た。秋は、驚いたものの「冬花さんにも連絡しなくちゃいけないわね」と苦笑いしてくれた。天馬が部屋に戻ると太陽は手持ち無沙汰にキョロキョロしていた。

「ねぇ天馬!この辺見ていい?」

「うん、いいよ。」許可を得て漸く太陽は天馬の机や棚の上を見る。他の人の机など知らないが、男子中学生にしては整理整頓されているんじゃないかと太陽は思った。

「意外と綺麗だよねーもう少し汚いかと」

「意外と、は余計だよ」

天馬のツッコミを聞き流した太陽は、目についたあるものを手にとった。

「これ…」

太陽がぽつりと呟いたのを見て、天馬は視線を太陽の手元に移す。

「それ?沖縄の写真だよ。」

ふふ、と笑うと、天馬は机の引き出しから沢山の写真を出した。海や、空、花、石畳の道、燈台に砂浜。すべて沖縄の風景だった。

「太陽には話したことなかったね。俺、沖縄からこっちに住むことを決めて、家族と離れてるんだ。でもこの写真のお陰で、いつでも故郷のことを思い出せる。」

天馬が目を閉じれば、その脳裏には故郷の景色が鮮やかに浮かび上がる。穏やかな天馬の表情に、太陽も笑みを浮かべた。

「いつか行きたいな。天馬と。」

太陽が無意識に呟くと、天馬は太陽を見て微笑んだ。

「うん、大人になったら2人でいこう。案内してあげる。」

「絶対だよ!」

2人は固く指切りをして誓った。


その晩、2人は床に布団を二枚並べて寝た。ベッドもあったが2人で並んで寝たいという太陽からの強い要望があった。
肩を並べて眠る2人は、夢の中に同じ景色を見た。それは写真に映るような、色鮮やかな沖縄の自然と、元気に走り回る互いの、数年後の姿だった。




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早く病気なんか直して、沖縄で式挙げて寿命まで一緒にいてください雨天ちゃん



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