神童と天馬
2012/02/01 17:54
※8話前くらい
最近、神童はやたらと視線を感じていた。もちろんその視線の主はわかっていた。今もまた、見られている。
途中から一緒に登校してきた霧野が声を掛ける。
「アイツ…またお前を見てるな。」
「放っておけ。すぐ飽きるさ。」
神童は視線の主――松風天馬のいる方へ目を向けないまま、昇降口を通った。霧野はやれやれと言った顔をしていた。
神童にとって、誰かに見られることは慣れていた。それはピアノの発表会での大衆の目もそうだし、日常生活での女子からの目もそうだ。そして後者は、神童が嫌いな目だった。
(アイツらは俺を知らないで俺にあんな目を向ける。見た目や才能でしか俺を評価していない。)
神童は今まで何度か、女子からの告白を受けてきた。断ることが殆どだが、付き合ってみることもあった。だが殆どが、口下手で現実主義の神童に、失望したと言い出す。
そういった経験がトラウマになり、神童は全てに大して頑なになっていった。友達は霧野くらいで、サッカー部員ともろくに会話もしなければ、クラスにも馴染まない。そして次第に誰も神童に話しかけなくなった。だからこそ神童は、自分に構う松風天馬が嫌いだった。
(女子とは違うが、あれは俺に憧れる目だ。アイツは俺のプレーしか見ていない。俺の才能だけに憧れているんだ。)
そう思えば思うほど、気持ち悪くなる。
(そう思っている筈なのに。何故だろう…アイツの言葉や行動に、いちいち動揺してしまう。)
松風を避けながら、松風に惑わされる自分が怖くて気持ち悪かった。
(この気持ちは、一体……)
-----------------
関係ないけど実花菜は8話の「キャプテンはサッカーを好きって気持ちを守ったんだと思います。」がすごくすきですね。ちゃんとキャプテンの考え方を理解してる感じ。サッカーがうまいからキャプテンが良いんじゃなくて、そういうとこに天馬は惹かれたんだなって解釈してます。
prev | next