イシドと天馬
2012/01/31 07:11
帰り道、いつものように部活が終わっても動き足りない天馬は河川敷を目指す。途中、複数の男が天馬を取り囲んだ。
「誰ですかあなたたちは…!」
天馬は危険を察知して身構える。
「松風天馬だな。捕まえろ。」
リーダー格の男が言うと、男たちは一斉に天馬に飛びかかり、1人は後ろから羽交い締めにし、1人は腹を蹴った。
「…がはっ…」
鳩尾を殴られ、そのまま天馬の意識は飛んだ。
「連れてけ。」
リーダー格の男の呼び掛けで男たちは天馬を引きずりながら、黒い車に乗せて発車した。
イシドが自室のベッドで僅かな休養を取っていると、手下の者が部屋に入ったきた。
「何の用だ。」
「あのお方の命令により、反乱因子である松風天馬を捕獲しました。」
「あの人が…」
「はい。殺して、死体は隠せと仰るので、イシド様にもご報告…」
バンッ、激しい音が部屋に響いた。イシドが机を叩いたのだ。
「……殺す…のか…?」
イシドの鋭い眼光に、手下の男は怯んだ。
「…っ…はい、サッカーの秩序の為の、犠牲になってもらうと、」
「待て、彼の才能は殺すには惜しい。私がシードへ勧誘しよう。ここへ連れてこい。」
「ですがあのお方には」
「私が言う。良いから早くしろ。」
手下の男は慌てて部屋を出る。イシドはふう、と溜め息をついた。
(かれを殺すわけには…)
イシドは再び、休養の為ベッドに臥した。
暫くして、気絶した天馬が運ばれてきた。小さな身体、幼い顔、細い手足、何もかもが未発達の13歳の少年。
(どうしてこんな小さな少年を殺すことが出来るだろう?)
イシドは天馬をベッドに寝かせると、その髪を撫でた。この小さな身体に、皆を引っ張る精神力が秘められていると思うと、何故か懐かしい気持ちになった。
(彼のサッカーへの情熱はアイツに似ている…)
かつての仲間の面影を、天馬に重ねる。
(彼ならば必ず成し遂げてくれる…革命を)
イシドはベッドから離れると、 天馬が起きるまで寝かせてやることにした。
________________
飽きた オチなし
prev | next