シュウと天馬
2012/01/26 16:44
もう何度目になるだろうか、何度やっても結果は同じ。それでも、シュウは滝を挟む崖の縁に立つ。一歩、軽く飛び出しそのとき後ろから強い力で引き戻される。
「…天馬。」
シュウの背中にしがみついた天馬は、シュウの腰にぐっと腕を巻き付けて離さなかった。
「ダメだよシュウ、そんなことしちゃ」
「良いんだよ。どうせ死ねないんだ。」
シュウは軽く天馬を押しのけようとしたが、天馬は首を振ってより腕に力を込めた。
「…良くない。シュウ、泣いてるよ。」
言われてはっと袖で目元を拭う。だが、袖を見ても濡れてはいない。
「泣いてないよ。」
「泣いてるよ。シュウの心が泣いてる。」
天馬は一度シュウから体を離すと、正面に回って手を握った。
「…シュウ、もうあんなことはやめて。」
天馬はその大空色の瞳にシュウを捕らえる。闇に等しいシュウの瞳は天馬を見ようとはしない。
「いいんだ、ぼくはもう死んでるから。」
「シュウは生きてるよ。今ここにいるんだ。」
天馬はにこりと笑う。
「一緒に生きよう。妹さんの分も。」
シュウの瞳から一筋の流星が零れ落ちた。
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シュウは死んでるから、落ちても居たいだけで血も出ないし死なない。
天馬はシュウのことを全部知ってる。
そういう設定。
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