拓天がキスするだけC
2012/01/19 00:00
キャプテンが家にきた。手土産にと言って高そうなケーキを持ってきてくれた。今日キャプテンが来たのには理由はない。ただ最近お互いゆっくり出来てなかったから、家で話したいと呼んだ。おれとキャプテンは恋人同士だった。
「ケーキ、いただきますね。」
「ああ。…せっかく秋さんが出してくれたし、俺も食べよう。」
他愛ない会話。狩屋が意地悪だとか、剣城はぶっきらぼうに見えて優しいとか、葵の私服がかわいいとか。なるべくキャプテンが興味を持ってくれそうなものをと、チームメイトの話をした。キャプテンはすべてに相槌を打ってくれた。
「それから…」
「天馬、」
話の途中 急にキャプテンが手を掴んだ。真剣なキャプテンの顔に、心臓が飛び上がって思わず口をギュッと噤む。
「…せっかく恋人同士2人きりで、部員の話なんて、ちょっと色気がないんじゃないか?」
「えっと…」
キャプテンが、ちゅ、と唇を重ねてきた。ケーキを食べていたからすごく甘い香りがした。
「キャプテン…」
「こっちのケーキ、食べるか?」
「え?」
キャプテンは自分のケーキを一口食べるとそのまままた唇を重ねた。今度は重ねるだけではなく、唇を舐められる。これはキャプテンの『口を開け』の合図だ。
僅かに隙間を開けると、キャプテンの舌が深く侵入してくる。そして、そのままケーキを口移しされた。キャプテンの口の中で溶けたケーキはオレンジの効いたチョコレートケーキだった。キャプテンの味と、チョコレートの味が口に広がって甘い。
「どうだ?」
「甘くて…おいしいです」
「そうか、良かった。で、天馬は食べさせてくれないのか?」
キャプテンは少し意地悪な顔をしていた。きっと遊ばれてる、そう思いながら、生クリームたっぷりのショートケーキを口に入れて、キャプテンの方を見れば待ってるように口を開けていた。おれはキャプテンのショートケーキを口移しした。ねちょりと、生クリームが音を立てる。唇を離すと、銀の糸がキャプテンとおれを繋いで、ちょっと下品かなと思った。
「ん、おいしいな。天馬の味がする。」
「キャプテンてば…恥ずかしいですよ!」
キャプテンは涼しげな顔をしていて悔しい。紅茶で口直ししつつ、キャプテンを恨めしげに見ると、「ごめんごめん」と笑いながら頭を撫でられた。こんなの反則だと思う、キャプテンはずるい。
「ケーキなんかより天馬のほうが甘いな。」
「甘やかしてるのはキャプテンですよ」
何てことない日曜日の午後の話。
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