真帆路と天城とα ※パロ
2011/12/22 12:05

―菫の花の色した少女が手招く

『さぁさぁ、皆さんお立ち寄りください。唯今より皆さんにお話するのは鬼の子の話。よくある昔の話では有りますが、聞いていただきたく思います。

時は遡ること数百年。ある村には「鬼の子」と渾名された少年がおりました。本当の名を真帆路と申します。彼の髪は赤く、その姿からそいつは赤鬼の子だと、村の子たちは忌み嫌っておりました。実際、 彼は鬼と人との間の子供でございました。しかしその事実を知る者は殆どおりませんでした。

さてその「鬼の子」、周囲の冷たい視線に耐えながら村で生きていくのですがある日、彼はもう一人、自分と同じように周囲から避けられている少年と出会います。その少年は名を天城と申しまして、少年ながら熊のように大きな体をしておりました。聞けば天城はその見た目のせいで、周りの子供たちから避けられると言います。自分たちの境遇に似たものを感じた2人は意気投合、すぐに友達となりました。友達はまた増え、これまた鬼と人との間に生まれた香坂という少女と出会い、三人、蹴鞠をしたりごっこ遊びをしたり、幸せな日々を送りました。

しかし、幸せというものはいつの時代も長くは続かないものに御座います。真帆路が12の歳を数えた頃、真帆路の母親は真帆路に告げるのです。お前はもう大人の鬼に近付いている、そのうち人間を喰うようにもなるだろう、と。それを聞いた真帆路は、天城と遊ぶのを止めました。天城は何度も真帆路に理由を問いましたが、鬼だと明かせば嫌われてしまう、それならば何も言わずに去れば良いと、真帆路は香坂と2人、村を出ました。

その後、天城は真帆路を探して村を出ましたが、手掛かりもなく、見つからないので、村に帰ることにしました。
天城が村へ帰ると、村の子たちはもう天城の姿だけを見て怖がらなくなっていたので、自然と天城と仲良くし始めました。めでたしめでたし。

…真帆路と香坂の行方?さぁて、鬼の行方など知りませぬが、もしかしたら案外、身近にいるやも。2人は天城が大好きで御座いましたから、数百年後の今でも、天城と遊んだこの場所を訪れてるかも知れません。』

―にこりと笑った少女の瞳はどこか懐かしげだった。




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鬼は老いません




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