神童と霧野
2012/01/17 22:36
夢を見る。いつもと同じ夢。
鬱蒼と生い茂る森。浅い湖が広がる。湖の上には霧が立ち込める。真っ白な濃い霧。霧の向こうには、いつも人が居る。俺はそこにいるのが誰だか知っている。
そっと手を伸ばす。
だが霧は晴れない。それでいい。見えなくて良い。晴れないでくれ。
目を覚ませば、そこは教室。
「寝てたのか?」
顔を上げる。
「具合でも悪いのか。六限の途中からずっと寝てたじゃないか。送ってやりたいが…今日は先約がいるな…一緒に帰れないとメールしないとな…」
「いや、大丈夫だよ。昨日考えごとしてて寝れなかっただけだから。待ってるんだろ?アイツが。早く行ってやれよ。」
「そうか?…ありがとう。気をつけて帰れよ、霧野。」
「ああ。」
手を振って見送る。
あの霧の向こうにいるのは神童だ。そして、霧の向こうのお前は、ひとりじゃないんだ。
嗚呼、霧よ。どうか晴れるな。俺に2人を見せないでくれ。
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笹川美和さんの霧聴きながら
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