カイとシュウと天馬
2012/01/09 10:25

※シュウは殆ど出ません


ゴッドエデンでチームゼロと戦った2週間くらい後、カイという、シュウと同じチームの少年が天馬の元を訪れた。

「シュウのところへ行こう」

そう言って、天馬の手を掴んだ。いきなりでよくわからなかった天馬だが、もう一度シュウに会えるならと、カイについていくことにした。カイが招いた先には車が用意してあった。ボディにはフィフスセクターのマークが貼ってある。警戒した天馬だが、カイはそれを軽く笑った。

「なにもしないよ。ただもう一度ゴッドエデンに行くんだ。シュウに会いにね。」

その言葉を信じた天馬は車に乗る。寝てて良いと言われたので着くまではカイの肩を借りて眠ることにした。

暫くすると車はそのままフェリーに乗り、海を渡ってゴッドエデンについた。5時間近い間、天馬はずっと眠っていた。カイが軽く揺すって起こすと、天馬はぱちぱちとまばたきして目を擦った。

「…ここは…」

見覚えのある土地に天馬は息を飲む。カイは「行こう」とだけ言うとすたすたと森の方へ歩き出した。慌てて天馬も後を追う。カイは天馬をきにしないでどんどん森を進んだ。鬱蒼と生い茂る森は木漏れ日が差し込んで神秘的だ。かなり奥まで進んだとき、カイが立ち止まった。

「ここだよ。」

そこには、苔の生えた四角い石ががたくさん並んでいた。カイはそのうちの1つの前で立ち止まると、天馬を手招きした。

「…これは?」

「シュウのお墓。」

カイは淡々と告げた。

「…シュウは、大昔の人間だ。この島にフィフスセクターが来るよりずっと昔の。」

天馬はカイの話を黙って聞いていた。カイによると、シュウはとっくの昔に死んだ人間だった。それでも、この世に未練があったから、成仏出来ずにこの島をさまよっていたらしい。

「シュウは、お前のお陰で未練を断ち切った。」

カイは、シュウの墓の苔を払うと、サッカーボールを横に置いた。カイは天馬の方をまっすぐ見つめ、小さく笑った。

「シュウを、解放してくれてありがとうな…天馬。」

天馬は、カイがシュウを好きなんだと悟った。カイは、これを言うためにわざわざ自分を呼んだんだと悟った。

天馬はシュウの墓の前にしゃがむと、手を合わせた。

「シュウ、おれ、絶対サッカー取り戻すから。自由な…楽しいサッカー取り戻すから。だから、みててね。」

立ち上がると、カイは黙って来た道を進んだ。天馬も黙ってその道を進んだ。

『天馬…ずっと見てるよ。きみたちのことも、サッカーのことも。』

天馬は何か聞こえた気がして振り返る。そこには、木が風に揺れて葉を鳴らすばかりだった。




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