神童と霧野
2012/01/04 13:01


天気の良い日曜日。霧野は神童の屋敷にきていた。霧野は庭のベンチに座り、カッパのようなものを着込んでいる。

ジャキン、と歯切れの良い音を立てて神童が霧野の髪を切る。桃色の糸がふわふわと風に吹かれて散る。

「だいぶ伸びてきたよな。」

「まぁな」

「今回も結える位にしておけばいいか」

「ああ、いつも悪いな。」

霧野はこうして、数ヶ月に一回神童に髪を切らせている。霧野は、家が日本舞踊の名家で、必然的に霧野自身もそれを習わされている為、髪を結う都合上、長く伸ばしているのだが、外での部活で日に曝された髪は傷むので、時々毛先を切るのだった。

ジャキジャキと細かく毛先を揃えている。神童が鋏を入れたところは自然に生えてきた時のような、ナチュラルな仕上がりになる。

霧野は神童が髪を切る音が好きだった。そして、神童自身が好きだった。自分は、こういう顔をしているせいか、幼いころから男女問わずに告白されていたので、あまり好きになる性別にこだわりはない。
だが、神童は違うことは理解していた。自分だけなのだと。だからこうして友達として、一緒にいることに幸せを感じていた。

切られた髪が、風に浚われる。
霧野はいつものように目を閉じて、神童が髪を切る音を聞き続けた。


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山なし オチなし 意味なし




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