無我夢中(フェイ天?)
2012/06/17 22:13


どこかの草原にフェイは立っている。空は高く、澄み渡る。そよ風がフェイの髪をそっと揺らす。下を見れば愛らしい花が咲いている。色とりどりの花もまたそよ風に揺れながら、花びらをふわりと舞わす。

「フェイ!」

呼ばれたフェイが振り返れば、ジャージ姿の天馬が微笑んで手を大きく振っている。フェイは微笑み返して天馬の方へと駆け寄る。



「…一体、いつまで続ける気じゃ?」

アルノはワンダバに問いかける。

「このままでは死んでしまうぞ?」

「フェイに、起こすなといわれてまして…」
ワンダバは苦々しく答える。その目線の先には、ベッドに横たわるフェイがいる。体中に管を貼り巡らせ、腕の管には点滴が繋がっている。また胸に貼った管はモニターにフェイの心拍数を映し出す。口には人工呼吸器を当てている。フェイの体は皮と骨だけであるかのように痩せ細り、いまにも餓死してしまいそうである。だが表情は穏やかなどころか、幸せそうに微笑んでいるように見える。

「ふむう…『自分の見たい夢を見ることが出来る装置』は彼には危険すぎだようじゃな…」

アルノは顎を撫でながら唸った。その横でワンダバはずっとフェイを見つめていた。

「それでもフェイが望むなら、このままにしてやりたいんです。この時代では、フェイには親も友達もいない…だったらこのままにしてやるほうが、フェイは幸せだと思うんです。」

アルノは溜め息を吐くと、手をひらひらと動かした。

「わしには理解できんな。まぁ、装置は好きに使うといい。彼が死んでもわしは知らんからの。」

「はい、わたしが責任を負います。」

ワンダバは、抑えたような声で答えた。ワンダバが言い終わると同時に、アルノはどこかへ消えていた。
ワンダバは視線をフェイにやったまま呟いた。

「フェイ…これでいいんだよな?」

答えることのないフェイは、見たことも無いほど優しい笑みを浮かべていた。





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