誰かと天馬
2012/04/04 16:32
「ちいさい頃はね、夜中の風の音が怖かったんだ。ごう、と鳴って窓を叩く風が、ちいさなおれには幽霊に感じてた。ガタガタと窓が揺れたのは全て幽霊がやったんだと思っていたんだ。」
「ふふ、ちっちゃな天馬もかわいいね。」
そう言って彼は笑った。
「エジプトには大気の神様がいて、風はこの神様の分身だって言われていた。だから、強い風は、神様が天馬を驚かそうとしていたのかもね。」
からかうような口調の彼に、おれは口を曲げて答えた。
「意地悪な神様。」
「あはは、天馬がかわいいからだよ。」
彼は、曲がったおれの唇に、そっと口付けをした。
「…天馬、その神様の名前教えてあげようか?」
彼が意味ありげな目を見せる。首を傾げた。
「もしかしておれも知ってるような神様なの?」
おれが尋ねると、彼はクスクスと笑った。
「知ってるはずだよ。」
そう言って、彼はおれの耳に手を当てて耳打ちした。
「その神様の名前は…」
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嵐の夜に
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